実演鑑賞
満足度★★★
11世紀後半のカスティーリャ王国(現スペイン)の英雄、ロドリーゴ・ディアス・デ・ビバール、通称エル・シッド(“主人”の意味)。12世紀後半に叙事詩『わがシッドの歌』が作られその後彼をモデルにした様々な作品が生まれる。17世紀フランスにてピエール・コルネイユが書いた悲喜劇『ル・シッド』は大ヒットとなり、17世紀を代表する作品とされている。今作がどこまでオリジナルに忠実なのかは不明だが、フランス女性を夢中にさせた要因はよく分かる。
キャスト10名中、8名が宝塚OG。自分的には宝塚を観るよりも元宝塚女優のストレート・プレイを観る方が興味深い。全員女性による恋と名誉の宮廷絵巻。
第一幕70分休憩15分第二幕60分。
ドン・ロドリグ(十碧れいや〈とあれいや〉)は全ての女性が恋に落ちる絶世の美男子、王女(宇月颯〈うづきはやて〉)ですら恋の病に身を焦がす。王女は胸に燃え盛る炎を消す為、友人であるシメーヌ(舞羽美海〈まいはねみみ〉)とロドリグの仲を取り持つ。王女の目論見通り、二人は相思相愛の仲へ。自分が望んだ事ながら内心身悶える王女。「一番ままならぬものは自分の心」。
だがシメーヌの父ドン・ゴメス(井上希美)はロドリグの父ドン・ディエーダ(小川絵莉)が自分を差し置いて近衛隊長に任じられた事に憤慨。口論の末、打擲してしまう。恥辱に打ち震えたディエーダは息子のロドリグに復讐を命ずる。恋人の父親と決闘をする羽目になるロドリグの葛藤。恋か名誉か?それが今作のテーマ。
とにかく綺麗な女優ばかり。お人形のような舞羽美海さんは悲劇のヒロインに相応しい。十碧れいやさん熱演のクライマックス、見守る他のキャストの目が涙で潤んでいるようにも見えた。宇月颯さん演ずる王女の秘めたる胸の裡がスパイスのように効いてきて、彼女を主人公に物語を組み立てても面白い作品。二役をこなした井上希美さんがやたら可愛かったが、元劇団四季!
ピアノをずっと演奏し続けるTAKA(a.k.a.こんどうたかふみ)氏、『愛の嵐 』のシャーロット・ランプリングのような衣装ながら舞台上唯一の男性であった。