29万の雫-ウイルスと闘う- 公演情報 ワンツーワークス「29万の雫-ウイルスと闘う-」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    多くの当事者に取材したからこその、生き生きした細部に満ちていた。口蹄疫にかかった牛を殺す消毒薬の注射のとき、注射器の中の血液がさっと黒く変わる。出産間近の牛を殺すとき、子どもを産ませてから、親子を殺処分したほうがいいのではないかという、やるせない迷い。ワクチンは牛豚を活かすためではなく、ワクチン接種が、ウイルス封じ込めのために殺処分してしまう。口蹄疫にかかったのならあきらめも付くが、一生懸命消毒して防いできたのに、結局予防のためにワクチンを打つときが一番苦しかったという農家の声。

    舞台は、牛舎のセット。十八番のストップモーションの場面が、防護服を着ての、家畜の検査、殺処分の過程を、視覚的に想像させた。証言の言葉が中心の芝居なので、いいブレイク的変化にもなった。ベテランで、いくつも重要な役を演じた奥村洋治がよかった。若手では松葉杖をついた高校生役の川畑光瑠に華があった。

    大学教授の講演のかたちで、口蹄疫はじつは治る病気で、その肉を食べても害はないと示された。なぜ殺して埋めるかというと、「清浄国」として畜産物輸出(?)の自由を得る国益のためだと。これは知らなかった。この芝居で得た情報からすると、輸出しないなら(日本の畜産品がそれほど国際競争力があるとは思えない)、無理して殺処分しなくてもいいのではないか。
    なお、ウイキによると、発展途上国はワクチン接種で終わらせて、殺処分まではしないことが多いそうだ。

    ネタバレBOX

    2010年の宮崎での口蹄疫を題材にしている。この芝居は2012年に宮崎県の劇団が初演した。取材も主にはその時に行っている。その後の追加取材も含めて、今回、古城十忍が構成・脚本したもので、ほぼ新作とも言える。当時は畜産農家だけが強いられた、外出制限、人。家畜との接触制限が、コロナで日本中の経験になったということが強調されていた。新型コロナと、口蹄疫の経験がそっくりと。コロナのワクチンは、殺すためではないけれど。

    宮崎県の口蹄疫発生は292例だったそうだ。19万9000頭以上を殺処分下にしては、件数は少ない。これくらいで収まったのは、何よりだが、不謹慎ながら件数を聞くと意外とあっけない気もした。

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    2021/07/23 10:09

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