明日の朝、いつものように 公演情報 LUCKUP「明日の朝、いつものように」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    開演前に流れ続けるのはダーク・アンビエント。トレンディドラマ(死語)を思わせるお洒落な恋物語には不適格だが···、そこにも意味はある。
    70分で同棲5年目セックスレス2年目のカップルのすれ違いが描かれる。
    Cチーム、ヒロイン橘花梨(かりん)さんにやられた。何となく見覚えがあったが、「虚構の劇団」の『もうひとつの地球の歩き方』のヒロイン。妹に「お姉ちゃん全然もてないよ」と言われつつ、店の従業員が夢中になって口説いている感じがリアル。どこにでも居そうなどこにもいない存在感、この感じを醸し出すのは高難度。主演の阿瀬川健太氏も素晴らしかった。
    男女の性欲をあからさまに曝け出す描写はどことなく、「た組。」の『まゆをひそめて、僕を笑って』を思い出す。(主演の藤原季節氏が涙と洟水を大量に垂れ流しながら顔をクシャクシャにして「早漏を笑うな!」と激昂するような舞台)。
    主人公にアプローチする若い女性(井上実莉〈みのり〉さん)が可愛らしい。ヒロインの妹の旦那役、森田亘氏のキャラが秀逸。マスク越しに笑いがドッカンドッカン吹き出す観客席。不快じゃない下ネタ。
    作者は在り来たりの恋愛話にくるみ込んだ、普遍性のある一篇の詩を詠んでいる。ラストは重い。お勧め。

    ネタバレBOX

    森田亘氏、誠実な旦那面をして月4で風俗通い。財布にはバイアグラを常備。妊娠中の妻への口止め料として主人公にバイアグラを握らせる。
    女の性欲、男のナイーヴな性欲、手の中のバイアグラ。ほんの些細なすれ違いで嘘のように呆気なく壊れてしまう幻影。
    結婚まで真剣に考えていたのに、ヒロインは職場の男と寝てしまい、二人は別れる。

    ラスト・シーン。主人公の部屋に来ている新しい彼女「まだケンジさん以外の人の匂いもするね」。その言葉から、主人公は別れた彼女が初めて家に来た日の幻覚を見る。五年前、丁度コロナ真っ只中だった。「もしもコロナを移しちゃったら悪いから。」とマスクを外そうとしない彼女。「じゃあ、ここで一緒に暮らさない?そしたらマスクは要らないでしょ。」彼女の驚きとぱっと輝く笑顔。でもそれは昔のお話であり、今ではもう遠くへ過ぎ去ってしまっていること。
    くるりの『ばらの花』の痛み。「最終バス乗り過ごしてもう君に会えない あんなに近づいたのに遠くなってゆく だけどこんなに胸が痛むのは 何の花に例えられましょう」

    0

    2021/07/20 09:33

    1

    0

このページのQRコードです。

拡大