首切り王子と愚かな女 公演情報 パルコ・プロデュース「首切り王子と愚かな女」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    民を次々処刑する残酷な王子トル(実は可哀想な存在である=井上芳雄)と、王子の世間知らず=無垢な幼さに気づいた愚かな女ヴィリの出会いと別れの物語。いつのどことも知れぬ王国の、ファンタジーであり、寓話である。独白、というより傍白(=わきセリフ)が多く、物語の展開も含め非リアリズムの芝居である。その点では野田秀樹をほうふつさせる。家族劇などのリアリズム演劇で大きな成果を上げてきた蓬莱隆太の新たな挑戦であり、彼の持つ幅広さを示した。

    冒頭、トルと兵士長ツトム(高橋努)
    の首切りの処刑と、がけから飛び降りて死のうとしたヴィリの二人の出会いから、ズカリと王宮の核心に入っていく。トルの母、女王デン(若村麻由美)が実際は王国を仕切っている。兄王子ナルの3ヶ月後に生まれたということから不吉がられ、北の孤島に幽閉されていたトル。ナルが不治の病の床に伏したため、トルは呼び戻され、女王の手足となっている。

    トルは王女ナリコ(入山法子)を抱こうとせず、ナリコはイケメンの兵士ロキ(和田琢磨)と影で密会している。王子の世話係になったヴィリは、「トルは子ども。首を切らされてるだけ。必要なのは遊び相手」とカードゲームの相手になり、王子を慰める。ヴィリは実は王族の歓心をかって、出世しようという下心もある。

    数年前に家を出ていったヴィリの姉が王の家臣になっていた。近衛騎士リーガン(太田緑ロランス)である。リーガンは実は圧政をひく王を倒す組織の幹部であり、部下に、競馬に出場する王を狙い撃ちさせた。(この競馬はおもちゃの木馬を使って、なかなか見せる)そのとき、ヴィリが身を挺して王を守った。リーガンはとらわれ、ヴィリは第二?王女に取り立てられる。(ここまでが1幕)

    ネタバレBOX

    2幕は、リーガンと兄王子ナル(井上芳雄、ここだけ一人二役)の出会いの回想から。やはりがけから飛び込もうとしていたリーガンにナルは「生存阻害要因が生存促進要因を上回っているという事だろ。どうしたら促進要因が上まわるかな?」と説得を試みるが、うまくいかない。そこでナルは「そのどれか一つがかなう国を創る」と決意し、リーガンはそれを助けるために家を出た。
    そのナルが倒れてトルをを呼び戻したのだが、実は女王の切なくも怖ろしい狙いがあったのだった。トルの体にナルの魂を宿らせ、トルの代りにナルを生き返らせ王位につけようというのだ。そのためにトルには魂が抜ける薬を、長い間ひそかに与え続けてきた。
    (そういう事なら、トルより賢王子ナルの方がいいのでは?と思わせるところがある。よき目的のために、多少の犠牲は許されるのか。という爾来繰り返されてきたテーマがほの見える。トルの孤独=母にも愛されず、ナルには遠く及ばず、ヴィリも親しい兵士との酒盛りで、自分は誘われない=がいやます)

    ナリコの密告によりヴィリとリーガンが姉妹であることがばれるが、トルはヴィリをかばう。民衆の蜂起がおこり、ロキは討ち死にし、リーガンはどさくさに牢を逃げる(たしかナリコがカギを開ける。もうこの国は終わりだ、私も逃げると)
    焼け落ちる城を、ヴィリは抜け出す。薬のせいで死んだトルにかわって、ヴィリは走る。しかし、行く手に何があるのか。「この国に見るべきものはあるだろうか」「この国に触れるべきものはあるだろうか」のことばには、不確定の未来しかみえない。

    0

    2021/07/04 15:20

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大