首切り王子と愚かな女 公演情報 「首切り王子と愚かな女」の観てきた!クチコミ一覧

★ 満足度の平均 ★ ★ ★ ★ ★ 4.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    民を次々処刑する残酷な王子トル(実は可哀想な存在である=井上芳雄)と、王子の世間知らず=無垢な幼さに気づいた愚かな女ヴィリの出会いと別れの物語。いつのどことも知れぬ王国の、ファンタジーであり、寓話である。独白、というより傍白(=わきセリフ)が多く、物語の展開も含め非リアリズムの芝居である。その点では野田秀樹をほうふつさせる。家族劇などのリアリズム演劇で大きな成果を上げてきた蓬莱隆太の新たな挑戦であり、彼の持つ幅広さを示した。

    冒頭、トルと兵士長ツトム(高橋努)
    の首切りの処刑と、がけから飛び降りて死のうとしたヴィリの二人の出会いから、ズカリと王宮の核心に入っていく。トルの母、女王デン(若村麻由美)が実際は王国を仕切っている。兄王子ナルの3ヶ月後に生まれたということから不吉がられ、北の孤島に幽閉されていたトル。ナルが不治の病の床に伏したため、トルは呼び戻され、女王の手足となっている。

    トルは王女ナリコ(入山法子)を抱こうとせず、ナリコはイケメンの兵士ロキ(和田琢磨)と影で密会している。王子の世話係になったヴィリは、「トルは子ども。首を切らされてるだけ。必要なのは遊び相手」とカードゲームの相手になり、王子を慰める。ヴィリは実は王族の歓心をかって、出世しようという下心もある。

    数年前に家を出ていったヴィリの姉が王の家臣になっていた。近衛騎士リーガン(太田緑ロランス)である。リーガンは実は圧政をひく王を倒す組織の幹部であり、部下に、競馬に出場する王を狙い撃ちさせた。(この競馬はおもちゃの木馬を使って、なかなか見せる)そのとき、ヴィリが身を挺して王を守った。リーガンはとらわれ、ヴィリは第二?王女に取り立てられる。(ここまでが1幕)

    ネタバレBOX

    2幕は、リーガンと兄王子ナル(井上芳雄、ここだけ一人二役)の出会いの回想から。やはりがけから飛び込もうとしていたリーガンにナルは「生存阻害要因が生存促進要因を上回っているという事だろ。どうしたら促進要因が上まわるかな?」と説得を試みるが、うまくいかない。そこでナルは「そのどれか一つがかなう国を創る」と決意し、リーガンはそれを助けるために家を出た。
    そのナルが倒れてトルをを呼び戻したのだが、実は女王の切なくも怖ろしい狙いがあったのだった。トルの体にナルの魂を宿らせ、トルの代りにナルを生き返らせ王位につけようというのだ。そのためにトルには魂が抜ける薬を、長い間ひそかに与え続けてきた。
    (そういう事なら、トルより賢王子ナルの方がいいのでは?と思わせるところがある。よき目的のために、多少の犠牲は許されるのか。という爾来繰り返されてきたテーマがほの見える。トルの孤独=母にも愛されず、ナルには遠く及ばず、ヴィリも親しい兵士との酒盛りで、自分は誘われない=がいやます)

    ナリコの密告によりヴィリとリーガンが姉妹であることがばれるが、トルはヴィリをかばう。民衆の蜂起がおこり、ロキは討ち死にし、リーガンはどさくさに牢を逃げる(たしかナリコがカギを開ける。もうこの国は終わりだ、私も逃げると)
    焼け落ちる城を、ヴィリは抜け出す。薬のせいで死んだトルにかわって、ヴィリは走る。しかし、行く手に何があるのか。「この国に見るべきものはあるだろうか」「この国に触れるべきものはあるだろうか」のことばには、不確定の未来しかみえない。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    劇場新装のこけら落としがコロナ禍にぶつかったのは、不運だった。
    ステージに向かって扇型に広がるスロープのある芝居を観るのは最適の700程の客席を持つパルコ劇場の自前の制作作品である。ここで新しい渋谷劇場文化を打ち出そうという意欲が作・演出・キャスティング、美術など、舞台のすみずみまで溢れている。
    なかでも、意表を突いたのは物語。
    タイトルだけを見ると、時代錯誤かと思うようなタイトルだが、中身はいまをはやりのコミック原作を思わせる奔放なファンタジーだ。しかし、2・5ディメンションとは全然違う。作・演出の蓬莱竜太はもともと小劇場の出身で、小さな世界を得意としていた。それがデビュー以来20年地道に経験を重ねてこの大型のファンタジーの世界で演劇を作った。時代も場所も架空の王国という現実の手掛かりが全くない世界を舞台にするのはかなり難しいが、成功すれば「スターウオーズ」のように大きく化ける。内々、そういう狙いがあるのかと思わせる器量の大きさがあるところが面白い。するとこれはエピソードXなのだろうか。
    没落が忍び寄っている女王(若村麻由美)王国の跡継ぎ王子(井上芳雄)をめぐる権勢争いに揺れる王宮に庶民の若い女(伊藤沙莉)が巻き込まれる。愚かな身分の低い女と言われながら、不運な運命を背負った王子とともに王国の明日を開いていく。まぁ、なーんだと言われるような話ではあるが、変に時勢批判や時流に媚びたりしないでまっとうに現代のファンタジーを作ろうとしているところを評価したい。広いステージを生かして多くの構成デッキを組み合わせて舞台を作っていく美術も、歌える主演者を生かした印象的な音楽も、ベテランの中に一人入っている新進の女優伊藤沙莉も、なかなかいい。王子と愚かな女の違いをセリフで見せているところなど蓬莱らしい工夫である。
    昼間の公演だがほぼ9割の入り。ファン客ばかりでないところも頼もしいが、こういう演劇がどのように発展していくかは、よくわからない。劇場の力量にかかっている。

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