実演鑑賞
満足度★★★
休憩10分含む2時間40分。この長丁場を全く退屈させない工夫が凄い。素直に面白かった。この手の作品に興味を持てず全く観ない人にこそ試しに一度観て欲しい。観客を楽しませようとする熱意とサービス精神が舞台観劇初心者の心を掴んでいく。その凄さが理解出来ない人達は自然淘汰されていく世の理。
2.5次元っぽい架空疑似日本史チャンバラ活劇。『ボクラ団義』の久保田唱氏の創る世界にも似て。出演者に鵜飼主水(うかいもんど)氏の名があるだけで二段階くらい格が上がる印象。所作と佇まいそして殺陣の鮮やかさが、時代劇になくてはならない俳優としての立ち位置を確立した。
疑似日本“ジパング”、鎖国を続ける幕末時代。新たな時代の扉を開けようと開国を目指す『飛竜革命開国軍』と幕府の存続の為、鎖国を守ろうとする『新選組』の争いが続いていた。だがその実、将軍徳川慶喜は身分制度を撤廃して幕府を解体し、民主主義の新時代への変遷を自らの手で果たそうと胸中に秘していた。
嘗て代々幕府の要職に就きながら、今ではしがない市井の髪結い床(床屋)の服部半蔵親子。『開国軍』の中に雑賀衆(さいかしゅう)の忍術使いがいたことから戦いに巻き込まれていく。
登場する忍術は『傀儡の術』だけで、「印」を唱えると敵の動きを操ることが出来、「解」を唱えると術が解ける。ゲーム感覚で観ていて楽しい。殺陣が集団舞踊のようにリズミカルで色鮮やかに衣装が交錯、テンポよく子気味いい。シュールなギャグ満載で場内笑い声が絶えない。六行会ホールやCBGKシブゲキ!!はハコの大きさがこういう作品を観るのに適している。
両手に鎌を構える半蔵側のくノ一役、窪田美沙さん(元仮面女子)が可愛らしく、『開国軍』のピストル使い栗原みささんも目を惹く。
舶来の御禁制品を扱う庶民の闇市的な存在、“楽市”。南蛮料理やタロット占い、スロットマシーンまである。そこでスロットが揃う毎に従業員全員で踊り出すのだが、何度も繰り返されていく内にかなり痛快で、一番記憶に残るシーンとなった。にこにこ踊る“楽市“の女給役、冨樫結菜さんが最高。
そこに居るインチキっぽい占い師が主人公ハンバと幼馴染の雑賀衆ツタエの運勢を見る。「過酷な将来が待ち構えているから、お守りとしてこれを買え」とガラクタの二振りの刀を高値で売り付けられてしまう。「まあ、いいか」とその玩具を腰に下げる二人だった。