実演鑑賞
満足度★★★★★
歌人、シナリオ作家、編集者として若くして大成功を収めてきた寺山修司。1967年に劇団『天井桟敷』を結成、その旗揚げ作品がこの『青森県のせむし男』。
大して観てきた訳ではないけれども今まで観賞した寺山作品の中で一番良かった。
森ようこさんのファンならば今作は必見。かなり出突っ張りでオン・ステージ感もある。
PUNK BANDのデビュー作を聴いている感じで、思うが儘に喚き散らしている。後々になると理性が邪魔をして理論武装の処世術に陥るのは世の常。恥知らずの一発目であるからこその幼稚で稚拙な絶叫が歳を重ねても胸を打つ。今作を寺山初体験で観たかった。
青森の名家で次期当主の息子が醜い女中を手籠めに。彼女が孕んでしまった為、世間体を慮り仕方無く入籍。出産の前に息子はコレラで死亡。周囲の冷酷な視線に耐えかね女中は産んだ我が子を山に捨てた。運か不運か生き延びた赤子は畸形のせむし男。因果の旅の末、生家に盗みに入り捕らえられる。三十年振りの母との再会であった。しかし、この話には嘘があり・・・。
安っぽいPOPな美術が歪な異空間を中和している。映画『エレファント・マン』調に写実的に演ればうんざりする題材だろう。
今回は観ておいた方が良い。