テンペスト ~はじめて海を泳ぐには~ 公演情報 ブリティッシュ・カウンシル/公益財団法人としま未来文化財団/豊島区「テンペスト ~はじめて海を泳ぐには~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    主催「ブリティッシュ・カウンシル/公益財団法人としま未来文化財団/豊島区」としてみた観点(2回目)。

    本公演は、障害のある演出家と俳優たちによって作り上げられる舞台、シェイクスピア最後の戯曲である「テンペスト」上演までの稽古を劇中劇とする。いわゆるバックステージものである。障碍者の表現の可能性を模索するような試み。さらに国籍による文化や言葉の違い、その多様な”ちがい”を橋渡しする意欲作。

    公演を支援しているのが「あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)」(主催:ブリティッシュ・カウンシル/公益財団法人としま未来文化財団/豊島区)だ。活動支援は、「親しみやすい良質の舞台公演から、実験的な作品や国際共同制作まで、様々な公演事業を開催してきた。また区立劇場として地域に向けた参加型ワークショップやアウトリーチを実施するほか、芸術文化活動を支える人材を対象にした講座なども継続して実施してきた」といった趣旨によるもの。そして「豊島区が掲げる国際アート・カルチャー都市構想をふまえ、多くの劇場が集積する『演劇の街・池袋』の拠点として機能し、芸術文化を通して多様な人々が集い交流する『みんなの劇場』として、活力に満ちた豊かな地域社会の実現を目指す」としている。まさしく、さまざまな「ちがい」の観点から架橋になるような企画であった。

    (上演時間1時間45分)

    ネタバレBOX

     自分とは異なる他者との向き合いを通して、公演「テンペスト」を構成していく。その過程を通じて演劇の面白さ、と同時に劇中劇のキャストとして成長していく人々の姿を生き活きと描き出す。演劇という共通点、しかしそこに携わる人々の「ちがい」が さも対極にあると思い込んでいる事を気付かせる。無謀な試みの公演だなと思いながら観に行ったが、当初の思いとは別に、驚きも戸惑いも、気づきも発見も曝け出し、みんなでシェアするような舞台であった。

     公演は、英国の障害者アートムーブメントの先駆的存在であるジェニー・シーレイを総合演出に迎え、日本・英国・バングラデシュの3か国から障碍のある演出家、キャストが参加する。シェイクスピアの「テンペスト」上演までの劇中劇。さらに新型コロナウイルス感染症の影響に見舞われた世界の有り様も反映させたオリジナル作品として再構築している。

     日本の演出は、大橋ひろえ女史と岡康史氏の2名。キャストには、日本人4名、英国人3名、バングラデシュ人2名の障碍のあるアーティスト、そして聴覚障害のある母親に育てられたコーダ(CODA: Children of Deaf Adults)の女優・吉冨さくら女史。文化や言葉、障害の違いを超えて作り上げる新たな「テンペスト」、その試みと意義には共感するが…。
     やはり、稽古を通して物語「テンペスト」が構築されていく過程が観たかった。その点だけが残念だ。次回公演も楽しみにしている。

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    2021/06/05 20:31

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