アルビオン 公演情報 劇団青年座「アルビオン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2021/05/24 (月) 14:00

    イングランド人というものは、いつも強がりだ。
    世界の公用語としてNo.1の地位を占める英語は、かつて国内での公用語をフランス語に奪われた時期があったらしい。シェイクスピアの作品に見るイングランドは、たまーに勇猛果敢あるいはひどい跳ね返りが出てきては、フランスに戦争を売り、勝利を挙げその軋轢を取り払う。しかし、そんな海外での戦果の陰で、いつも内憂が起こり、いつの間にかまたフランスの軍門に下るか、その勢力にひれ伏すかを繰り返す、かなりなヘタレ野郎だ。
    「大英帝国」などと、日本人が賞揚し憧憬するイングランドはエリザベス1世以降のものだ、だからか、この国の貴族、元はヨーロッパのはずれの偏狭な島国でしかなかったという強いコンプレックスを抱き、自分の弱みを見せまいとえらく強気に出る傾向がある。そうそう、まさにジョン・ブルのように。そこには諦念や無常の価値意識は存在の余地を持たない。それを見苦しい老体の足掻きと思うのか、武士は食わねど高楊枝的な粋とみるかは(少なくともジョン・ブルの容姿にその美学は毛頭ないが)、人それぞれだろう。

    ネタバレBOX

     この作品が「桜の園」と決定的に異なるのはそこだろう。おそらくバートレットは。現在のイングランドを強烈に意識しながら、20世紀初頭のロシア地主と比較しながら書いたのだと思う。チェーホフがラネーフスカヤを滑稽だと意識したのと同様に、バートレットも
    オードリーを陳腐だと意識したのだと思う。オードリーが購入したのは、土地こそ違え20世紀初頭の繁栄を垣間見せ、今は廃園と化しつつあった大庭園のある邸宅である。
     ただし、オードリーにはラネーフスカヤのように、森の木が倒されるあの伐採の音は聞こえなかったようだ。オードリーの最後の抗いは、何に結びついたのだろうか。

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    2021/06/01 05:59

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