実演鑑賞
満足度★★★★★
体育会系営業部の千葉鉄と、自由闊達(という名のぬるま湯)のFSS営業部が、鉄鋼再編で合併し、それぞれの社員が、昇進と左遷、天国と地獄、をみていく。社内の派閥の絆=しがらみや、出世競争、腹のさぐりあいと意地の張り合いは、誰もがどこかで見に覚えのあることなので、身近に感じられる。だからあまり説明がいらない。そこで2つの営業部の社風の違い、ミナト自動車の仏資本参加入りとコストカッター社長の赴任、2つの鉄鋼会社の業績の逆転から、対等という名の吸収合併など、どんどん話が進んでも十分ついていける。上司と部下の浪花節的絆と切り捨て、その逆転と、波乱万丈の会社員人生の悲喜こもごもを楽しく見られた。
結果を出すために頑張るのか、働き方改革で無理はしないのかの対立も、結果がすべての男社会で、当然残業覚悟でやると思ったら、あに図らんやワークライフバランスの主張が優勢。私は寂しい気がした。古いわけではない、やっぱり成果を出すために脇目もふらず突っ走ることに生きがいを感じると思うのだ。
一緒にみた女性は(結構キャリアウーマンなのだが)「完全に男社会の話でへどがでそうだった」と。それだけ芝居がリアルだったということで、これは褒め言葉です。ひさびさの男のロマン全開の浪花節的ビジネスドラマ。2時間、満喫しました。
舞台の奥に、素通しで見られる廊下を作って、部屋を出ていくときに底を歩きながらの姿が見えるのは、非常に効果的だった。部屋の外での素顔や、焦り、諸々の感情を付け加えて、まさに舞台に奥行きを与えた。