引き結び 公演情報 ViStar PRODUCE「引き結び」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    現在・過去を往還し、さらに未来まで時間軸をのばし人との繋がりをもたせた公演。その描き方は理屈というよりは感性で表現した そんな印象だ。タイトル「引き結び~紬ぎ結ぶは時間の糸~」にあるように時を隔て繋がりを観せようとするが、ご都合的なところもあり、ストーリー展開を追うといった観方をしていると逆に混乱し解り難くなる。前説でも言っていたが、肩の力を抜いてゆったりとした気持で、そう大らかに構えることだ。
    (上演時間1時間35分)【紬チーム 千穐楽】

    ネタバレBOX

    舞台セットは、中央が割けた大木(ヒマラヤスギだったら出来すぎか 花言葉=あなたのために生きる)を中心に上手・下手に変形段差を設けたスペース。さらに下手客席側に喫茶店。重要な小道具として固定電話が置かれている。後景(書き割り)はローマ数字、アラビア数字が書かれた幕があり、そこに後々、渦巻映像を映し時間という表現しにくい概念(または現在・過去の往還を歪化)を表わす。

    梗概…照美真也がかつての恋人・水橋桜の不慮の死を阻止しようと、現在(2001年)から過去(1974年)へタイム"トラベル"する。現在の真也には別れた妻との間に1人娘・藤田心桜がいる。過去を変えることによって現在に影響-娘は存在しないというタイムパラドックスは避けたい。物語の設定は、もじゃ神の神力なのか天才発明家・真也によるタイムマシンの発明によるものか、それとも彼の幻想なのか判然としない。さらに、現在と過去を何度も往還させるためストーリー展開が煩雑になるのが難点。またサイドストーリーとして、自分が父親から受けた虐待のトラウマで、自分に子育てが出来るかといった苦悩も放り込むからよけいに面倒だ。

    真也は自分の死期が近いことから、心残りである 桜との思いを繋ぐことに腐心した。であればタイム”スリップ”は1度だけで、そこの物語に厚みを持たせたほうが分かり易い。物語の全体を貫く”繋ぐ思い”は、たとえ愛しい人が亡くなっても、その人との楽しい思い出があれば生きていける、に表現される。結果的に過去は変えられないのだろうが、それでもラスト 真也と桜は27年ぶりに来世で邂逅する。27年という歳月によって2人の外見は変わってはいるが、それでも認識できるところに、時間の糸を感じる。

    現在と過去を往還するたびに1役2人が現れ、テンポの良さと相まってどちらの世界観なのか分かり難くする。役者が熱演しているだけに残念。さらに もじゃ神と原田真理子(星宏美サン)の登場が笑いとともに更に不思議な世界観へ誘う。真理子は言う、将来 息子へ影響する? ということは真也の娘・心桜と関係してくるのだろうか、という想像もできる。この件、アメリカのSF映画「ターミネーター」を連想する。未来・現在・過去、そして再び未来といった連関は紬そのもの。仮に時間は過去・現在・未来と続くのであれば、人の数だけ時間軸=人生があるということ。実に人の機微に触れる公演であった。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2021/05/23 16:40

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