実演鑑賞
満足度★★★★★
古き良き英国の姿を、イングリッシュガーデンに仮託している。庭に執着する女主人のオードリーが人物としてはいまの英国を象徴する存在でした。LGBTや紛争地で死んだ息子の死を理解せず、ビジネスにも行き詰まって、失われつつある伝統の幻想にしがみつく。一方、彼女の言うことにも一理あり、デジタルや開発ばかりで、自分の過去と出自を忘れていく英国への批判は、そのまま日本にも当てはまる。でも結局、周囲(EU)から孤立し、自分の世界に閉じこもる。決して、他人事とは思えず、見ながら、「イギリスよ、お前もか」と。
語り始めれば、どんなに語っても語りきれない、素晴らしい舞台でした。取り上げる主題は多く、(狭い庭だけの場所なのに)描かれる世界は広い。問題の根は深く、人物の感情は熱く。大きく振幅する。言葉もない…。休憩15分挟んで2時間50分の、けして短くない芝居ですが、全く長さを感じなかった。久びさに劇場の奇跡を堪能しました。濃密で緻密な戯曲、すばらしい俳優たち、美術、演出にも拍手。那須凛の美しさには、キャサリンやゲイブリエルでなくても、惹きつけられてしまいます。