うちのばあちゃん、アクセルとブレーキ踏み間違えた 公演情報 劇団チャリT企画「うちのばあちゃん、アクセルとブレーキ踏み間違えた」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    客入れのSEに何故か『あばれはっちゃく』、それだけで心を掴まれた。
    良く出来たホーム・コメディを観ていたつもりが、いつしか滅茶苦茶シリアスな社会学・文化人類学を突き付けられていく。
    凄く奥行きと世界観のある脚本で「SNSなんか皆さっさと手放してしまった方が良い」、帰り道そんな気分になること請け合い。
    とにかく面白いし、いろんなことを考えさせられる作品。

    高齢者暴走事故、SNSデマ拡散、ネットリンチ、You Tuber、Uber Eats···、全てが絶妙に絡み合ってしかも喜劇であり続ける90分。
    父親役梶野稔氏と母親役の石本径代(いしもとみちよ)さんの醸し出す安心感が観客を自然と作品世界にいざなう。石本さんの存在感は作品の軸となっているようだ。埴生雅人(はぶまさと)氏演じる娘の婚約者のキャラがまた面白い。微妙にズレた笑いをちょこちょこ巻き起こしていく。

    ネタバレBOX

    数年前、松澤くれは氏の『りさ子のガチ恋・ 俳優沼』を観た時にTwitterの舞台表現法に驚いた記憶がある。今回はイタズラ電話やスマホの通知音ばかりで新味がなく表現が古い気がした。不特定多数の悪意に全面的包囲されている焦燥感、個人情報から過去の経験からありとあらゆる自分自身の全てを公表され、身動きが取れなくなるまで追い詰められていく窒息感。尾崎豊の「核〈CORE〉」みたいな感覚が欲しい。

    最近では伊是名夏子(いぜななつこ)さんが車椅子障碍者の無人駅利用について問題提起をした処、“親の敵”ぐらいに叩かれ続けている。論点の善し悪しではなく、ネットリンチの目的化の加速。女子プロレスラー木村花さんなども傍から見れば大したことでもないような理由で自殺に追い込まれて行った。
    現代病などではなく、これはそもそもが人間の習性であり、DNAにプログラミングされた本能なのだろう。気晴らし、憂さ晴らし、歪んだ正義感の発露、僻み妬み嫉み、偉そうな他人を引き摺り下ろす快感、自身が社会に参画している充足感、匿名の加害者の圧倒的なる自由。そもそも人間は太古の昔からそんなものなのだから、どこかで諦め受け入れるしかない。

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    2021/05/17 23:08

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