実演鑑賞
満足度★★★★
“ロボット”の言葉の産みの親であり、手塚治虫に多大な影響を与えたチェコのSF作家の遺作とされる戯曲。ナチス批判を繰り返し、命を狙われ続けていた。
夫と長男を失うも、女手一つで息子四人を育て上げている母親が主人公。夫が戦死したことから戦争と関わることのないよう息子達を教育した筈が、内戦と他国の侵略の危機の中、子供達は自ら戦場に志願していく。
母役の増子倭文江(ますこしずえ)さん始め役者陣の品の高さとぷんぷんする色気が舞台を充満。亡き夫役の大谷亮介氏が三船敏郎っぽくダンディーで格好良い。キーマンでもある末っ子役の田中亨氏がジャニーズ系の美少年。
シリアスな固い話と身構えさせて、実は良質な喜劇でもある。悲劇と喜劇のギリギリの立ち位置で行われる家族対話が痛快。
クライマックスの母と末っ子の遣り取りは『身毒丸』や『毛皮のマリー』を想起させる寺山修司調に。かなりの作家達に影響を与えたであろう古典だ。
非常に味わい深く面白いのでお勧め。