実演鑑賞
満足度★★★★★
横浜のBankArtと言うとどうしても思い出される「グランギニョル未来」(2014)の強烈な記憶を上書きする、清冽な「作品」であった。ワークインプログレス(製作途上)と言われればそう納得されるが、複合パフォーマンスを謳うニブロールの面目躍如、柱、壁、高い天井に樹木の梢の影が次第に覆って行く映像・照明と、間接照明ならぬ間接音響とでも言うような、建物の境界を超え広がる音楽・音響、白と黒以外の色彩を殺いだ空間の光と影の間を動く三人の白い踊り子たち、三人を影の指南者然と立ち、移動する黒装束の者(矢内原)。中央と周囲を気持ち分かつ透明シートの衝立の間を観客は自由に動いて鑑賞して良く、パフォーマーも中央エリアからはけて外側を歩いたりそこで踊ったりフレキシブルな空気感はさながら森の中で戯れる子供の時間であり、溶暗から始まり夏の日差しの時間へと高まりやがて再び宵闇の支配する空間となる。子供の一日はまるで一生のように切実に刻まれていた遥かな記憶が呼び起され、そこに人生が重ねられる。
ずっと浸っていたい永遠性と、微かな物語性(時間経過)の切なさの混在する得難い体験。
踊り手の一人に先日の吉祥寺ダンスリライト出演グループの主宰の名前があった。明快なリズムのある音楽ではないため、何を補助線に三人が踊って(動いて)いるのか不明だが、その動きは「美」の追求というより己自身との対話という風で、自然の中での彼らなりの遊戯の時間、とも見えるが、完璧な調和の中で何故かそれとは一体化しない人間(神の眼差しからはそれ自体で美しい存在であるのに)と解せなくもない。