写し霞 公演情報 不定深度3200「写し霞」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

     いつも通りオシャレな空間処理。まだまだ伸びしろがあるので、今回は華4つ☆。

    ネタバレBOX

     作・演が工学部の修士課程を終了したばかりの若者とあって空間処理は実に合理定且つ美的である。無論色彩も、その組み合わせ、舞台美術各々の配置、色彩コントラストの妙、見やすさ等にも合理的で整合性の取れた安定感があり見事である。例えば、上手奥のキッチンスペースから下手へ順に居間を表すテーブル・カーペットやパソコン机とパソコンのある作業スペース、屋外を表す2人掛け用のベンチが的確な角度を保って置かれているが、居間のテーブルは黒、下に敷かれたカーペットは黒とグレイの市松模様、而もテ-ブルの天板とカーペットは縦横比で相似形になっている等数学的な美が現在している。これら総ての空間の奥に広がるホリゾントの色は白色。このホリゾントの上方部分がパソコンに映るZoom画面の拡大スクリーンになっているのも合理的でオシャレだ。
     若い世代らしくパソコン・周辺機器を実に自然に使いこなし全く違和感が無いことも我々・ロートルから見ると納得感が強い。一方そのようにIT機器を使いこなし一体感すら感じさせる彼らにとっても、これらの機器を通じて齎されるコミュニケーションの虚ろな感覚はごまかしようもなく彼ら若者の心・魂を蝕んでゆく。総てが空虚の淵で展開することの味気無さを補完し得るエートスやパトスを生み出す状況も、そこに至る方法も取り敢えず持ってはいない彼らの物質的な豊かさの中の見え難い飢えと渇きを遠い木霊のように聴きながら足掻いている、そのような不幸がここにはある。
     このような状況に楔が打ち込めるか否か定かではないが、若者たちの状況が上述のようなものに近いとすれば一つ表現者として指針になるかも知れない原点に「聞き書き」換言すればフィールドワークによる異質な体験との出会いがあるだろう。その到達点の一つに石牟礼道子さんの「苦界浄土」を挙げておきたい。

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    2021/03/21 21:39

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