サンサーラ式葬送入門-自在篇- 公演情報 feather stage「サンサーラ式葬送入門-自在篇-」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    初演を知っていて、一ヶ月前に普賢篇を観ているので話の流れは充分に分かった上で鑑賞。普賢篇と対になるちょっとした工夫・劇伴曲の変更が作品を新鮮に見せてくれた。

    期待していたご出演者の演技に大変満足。
    細川演出は俳優の個性を伸ばすようなところがある(と個人的に感じている)ので今作もとても楽しく拝見できた。

    以下ネタバレ。

    ネタバレBOX

    観客の反応が気になりながら作ったという初演とは異なり、今作は作品に自信を持って作り上げたもの。いろいろなシーンによりメリハリがついていたように感じた。

    出色のシーンは幸村先生を送るシーンか。「送る」はすなわち「殺害」である。しかし舞台上に展開される空気のカジュアルさが客席をも包んで笑いが起こる。
    初演時からこのシーンは笑いの起こるシーンだが凄惨な殺害シーンであり、その前後に日常たる食事がおこなわれる異常さを感じられるか、観客として試されている気分になる。

    初演より派手になった殺害シーンといえば境のシーン。斬られた場所をいたぶられて痛みに上がる境の悲鳴が流石。甲斐は標的をいたぶり、芹沢はそんな甲斐を止めるという点に人物像を垣間見た気持ちになる。
    境は殺されたあとの幽霊としての演技も最高!まばたきの少ないカッとひらかれた眼、工藤が起き上がったときに数瞬遅れてすうーと半身を上げる動き。お前を恨んでいると言いたげな、こう、まさにイメージしている「幽霊」だった。

    「ある男」作品の初手から自らの生命を売却しようとするこの人物は実は最初から異常人物である。それが最初から最後まで貫き通されているような演技。初演と同じ俳優が同じ役を演じているが初演よりパワフル、アップデートされているように感じた。

    「あのお方」藍川青年はAとBで俳優が別。どちらもイマドキの高校生として登場するのに終盤にはまるで別人のよう。年齢相応の感じも、超越した感じもどちらも読み取らせる佇まい。普賢篇の俳優のときもそうだったが「おいで」にぞっとするし艶を感じさせてくれた。自在篇の藍川青年、学ランの下が半袖なのとても良いです。素でどきっとしました。良いです。

    初演時から異色で目立つ役といえば殺し屋でありながら殺し屋らしからぬせりちゃんとその下にいる甲斐くん。今作も殺し屋らしからぬ芹沢はどこか聖人のような佇まい、慈母のごとき優しい顔で工藤を懐柔する。飄々とした初演の芹沢よりも優しさと冷静さを前面に出したような造形は俳優の内面があらわれたようで、この演技を観られる幸福を感じた。
    甲斐くんのやんちゃぶりは初演と同様でありながら、より獰猛で威張りがち、チンピラ感の増した甲斐くんは長身もあいまって大型犬の様相。愛すべきキャラクターをこの俳優に演じてもらえてありがたい。

    再演にあたり普賢篇・自在篇で加わったシーンはご都合主義的な感じあるが苦笑、まさに”入門”した工藤が習得した知識をつかおうとする場面ということで面白く拝見。

    あいかわらず銃声にびっくりします。殺害シーン多数のエンタメ作。脚本には余白があり、説明しすぎることはしませんし正解も解釈の間違いも提示されません。ご自由にどうぞというスタンスなのかな。
    作り手は好きに作るし、観客は好きに解釈する。それもまた良しと思っています。

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    2021/03/20 17:44

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