きらめく星座 ~昭和オデオン堂物語~ 公演情報 こまつ座「きらめく星座 ~昭和オデオン堂物語~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    素直に「とてもいい舞台を観た」と言える
    戦争というのは、ある日突然やってくるのではなく、日常とつながってじわりとやってくる。

    舞台となるオリオン堂にも戦争がじんわりとやってくる。
    歌好きで明るい家庭がどうなっていくのかを悲壮感なしで描いているだけに、哀しみは増す。

    台詞1つひとつが、それこそきらめいていたり、ずっしりとした重みがあったりするのだ。

    かなり大げさに書けば、舞台の、芝居の楽しみというものが、すべてそこにあるようにすら感じた観劇だった。

    ネタバレBOX

    明るい家族(同居人を含め)なのだが、ことさら母親が明るく、けなげである。
    実際は、舞台の裏ではため息をついているのではないのだろうかと心配するほどだ。

    脱走兵の息子もあまりにもノー天気すぎて、どうやらこれは寓話なのだろうと思うのだ。
    堅物の傷病兵の元軍曹も、その描かれ方は、徹底的に戯画化されているし、その元軍曹と結婚する娘も、かなり酷い話なのだが屈託はない。
    寓話にしなくては描けないような話なのかもしれない。

    元軍曹が違和感を感じると吐露するあたりから、舞台の様子は、ぐっと緊迫してくる。彼の手の痛みも象徴的だ。こういうあたりの表現はさすがだと思う。

    まるで、あるいは当然のように戦争というものがあり、近所の目を気にして生きている、徐々に悪い方向に進んでいるのに、その状況にうまく対応して、そのことに気がつかない、そんな(たぶん)どこにでもあるような家族。

    そうやって生きていた家族は、結局バラバラになっても、強く嘆くことなく、あくまで前向きで、生きようとする力は強い。

    ただし、長崎に帰る夫婦と満州の開拓団へ教師として赴く男の行く末は、あと数年で、さらに過酷なものになるのだが。

    ラストのポスターにもあるガスマスク姿の不気味さは、強烈だった。

    そして、明るく、生きる力溢れる家族が最後に歌う歌に、ピアノの不協和音が激しく重なるラストは、家族の行く末を暗示して、鋭く心に突き刺さった。
    それを反芻しながらの帰り道であった。

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    2009/05/14 02:44

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