満足度★★
上演時間はわずか75分。しかも、中身が理解不能。いくらジャニーズファン向けとはいえ、コクーンの一月公演で、これはいかがか。まだ空いたばかりだから、前売り客でコロナ客席は埋まっている。
この戯曲は演劇を問うメタシアターのドラマとして、演劇好きには知られている五十年ほど前に書かれた戯曲で、翻訳も本になって出ている。しかし、それは米英の演劇都市の演劇事情をもとに書かれた一種のバレ本で、ミステリ劇がお国の看板観光資源になっている国や、初演の翌日に大新聞に演劇批評がでかでかと出る(日本の新聞のように終演間際になって決まった枠で申し訳のような批評が出るのとはわけが違う)国情があって成立する。9割八分がジャニーズ客だった「オスロ」と違って、コクーンとなるとジャニーズ客は8割くらいにとどまり、幅広い年齢の男女の顔もちらほら見えるが、この芝居、大方の客にはどこが面白いか解らなかったに違いない。幸い本を読んでいたから、俗悪ミステリ劇や、批評家へのほとんど嫌がらせのような悪態や、舞台で繰り広げられる演劇の構造への批評も意図は読みとれたが、多分、英米では爆笑・大受けのところがクスとも笑えない、笑わない。それは演劇のバックグラウンドが違うからである。幕内は散々読み合わせをして万端尽くしたとパンフレットで言っているが、それは幕内だけのことで、演劇には観客がいる。仲間内でいいことにしましょう、と言うのはまるで今の政治だ。
コロナ騒ぎの中で、さっそく、身近でやりやすそうなこの本を見つけてきたのはさすがシスカンパニーだが、今回は読み違えた。この本は時々小劇場で上演していて、日本初演は、パルコの確かパート3で見た記憶がある。そこらあたりで好き者が集まって喜ぶ才人の若書きの本だろう。海外で、「日本人のへそ」をやろうという興業者がいないのと同じである。