#12『ピーチオンザビーチノーエスケープ』/#14『PINKの川でぬるい息』 公演情報 オフィス上の空「#12『ピーチオンザビーチノーエスケープ』/#14『PINKの川でぬるい息』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    『ピーチオンザビーチノーエスケープ』観劇。
    序盤の可愛い女の子たちの軽さが、後半の怒涛のクライマックスの重さを際立たせている。
    音楽、舞台美術、照明の効果も素晴らしい。
    ラストがいい。
    これから先、桜子と河原に幸あれと願う。

    男性客が圧倒的に多いが、ぜひ女性にも観てほしい。

    ネタバレBOX

    ミキオも道成も、必要以上に手を洗う。道成が「親が悪い」と言うが、本来ならば2人とも福祉や医療と繋がるべきだったんだと思う。
    更に、ミキオは上手く生きられない。仕事も上手く行かない。友人もいない。抑圧されている。
    カワチは善人だ。だが弱い。だからキョーコを守れない。
    峰は無自覚に差別し、無自覚にミキオを追い詰め、自分より弱い相手にマウントを取る。
    この事件が発覚した後、マスコミにマイクを向けられたら「最初からおかしい奴だと思っていた」と、嬉々として語るだろう。

    ラスト、桜子はミキオに縋る。
    でも、それは愛じゃない。せめて自分だけは可哀想なミキオを愛そうと、自らに言い聞かせた、愛だと思いたかったモノだ。
    桜子が自分を守るために生み出した人格たちは気づいてしまった。自分は桜子であると。愛ではないと。
    正気を手放せなかったキョーコは死を選び、正気を取り戻した桜子は自我崩壊のギリギリでミキオに縋る。ミキオしかないのだから。でも、それは愛じゃない。

    これは、中島さんが、若く可愛い女優さんたちの美しい肢体を使って、男たちを殴りに来ている物語でもあると思う。
    お前の中にミキオや道成はいなくても、峰はいないか?カワチはいないか?
    お前の周りに桜子やキョーコはいなくても、河原はいるだろう?「子持ちのシングルマザー」というだけで仕事は見つからない。黒帯だ、ボクシングやっているだと電話しているフリをしながらでないと夜道を歩けない。それが今の日本における女の「当たり前」だと知っていたか?それで?お前はどうする?と。

    圧巻である。
    役者陣がみんないい。
    素晴らしかった。

    あと。
    前半の、「ノルマ」と言いながらコスプレの女の子たちが腹筋やスクワットをするシーン。
    あれは、ほぼベッド上だけが生活空間の少女の体が弱らないための「ノルマ」だったのだと気づいた時、このディテールの細かさよ!と舌を巻きました。

    良い舞台でした。
    ありがとうございました。

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    2021/02/11 00:46

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