堕ち潮 公演情報 TRASHMASTERS「堕ち潮」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    昭和の末期、バブルもさほど届かない西日本の海辺の田舎町。土地の素封家の女主人(みやなおこ)は、南京大虐殺で活躍した亡夫を誇りに五人の子どもたち夫婦を保守の論理で支配している。その弟(渡辺哲)は土地の土建会社を経営して、その利権のために市会議員出馬を狙っている。一家のためにと哀願されて一家(登場人物一家15人)を集めた女主人は金銭的な助力を約束する。それが一家のため、という論理だが、一家の生活の実情には今までの保守の論理にはみ出すことが続出している。近隣にいる在日二世の選挙権、土建会社の談合、家族の職業選択、子供の教育方針、などなど、時代の動きをここでは、女主人は抑え込んでしまう。そして選挙で弟は当選。一家はその利権で潤って第一幕は終わる。第二幕は10年後、とそのさらに10年後。この間に昭和の「保守」のほころびは顕在化して、家族の中の軋みは大きくなり、市会議員の弟は死に、女主人は記憶も怪しく病床に伏している。
    潮には満ち潮と引き潮があるように、引き潮にさらされ堕ちていった地方の一族モノである。
    昭和のころまでは、高度成長で都会に出てきた一家が故郷へ帰る機会も多かった。多くは一族の冠婚葬祭。一族の数もおおかったし、叔父叔母も、従弟とも親しく付き合った時代だ。だれにでも経験のある家族設定で、これほどの大家族でない自分にも一つ一つの設定や人物にも「あるある」の実感がある。だが、ストーリーとして見ると、確かに「あるある」なのだが、どれもよくある話で、ラストに現代人が、昭和、もしくはそれ以前からの悪しき日本の保守体質を克服するのは心の問題だ、と説かれても、あまり心では納得していない。現代はさすがにこの段階は終えていると思うからである。(そうでもないのかな?)
    舞台は、一幕から一族が意見対立の大声でやりあうシーンが長く、舞台慣れしていない俳優さんも少なくなく、見ている方もつかれる。わかりやすく安心して見ていられるのは型通りながら渡辺哲、清水直子、と言った他の劇団のベテランで役がよくわかる。女主人役のみやなおこはちょっと荷が重すぎた。15分の休憩をはさんで3時間半は長いが一族のクロニクルをやるとすればこれくらいの時間は仕方がない。しかし、もっとストーリーにも登場人物にもアクセントのつけ方はあるだろうと感じた。
    横に長い座高円寺野間口一ぱいに広がった舞台は狭い劇場でシネスコを見ているような感じでこれが、意外に若い役者には舞台に立ちきれない原因になったのかもしれない。見えない仏壇を中央に配した設計はなかなか洒落ていたが。

    ネタバレBOX

    他の評者も指摘していたが、私の席の後ろに俳優仲間らしい二人連れがいて、大声でシャベルわ、指示通りに退席しないわと、特権階級さながらのふるまい、さらには背中に背負ったリュックで、振り向きざま、頭をけ飛ばされ、どーも、と言われたので、ぶんなぐってやろうかと思った。

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    2021/02/11 00:40

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