#12『ピーチオンザビーチノーエスケープ』/#14『PINKの川でぬるい息』 公演情報 オフィス上の空「#12『ピーチオンザビーチノーエスケープ』/#14『PINKの川でぬるい息』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    「ピーチオンザビーチノーエスケープ」
    【🔞】

    吊り橋効果を思わせる独特な描き方は、強烈な印象を与える。ノワール劇と言っても過言ではないが、囚われた少女の体と心(精神)、その成長・変化が並行して描かれることによって、別の味わいを持たせている。
    説明に”事実をモチーフに”とあるが、事実とフィクションを巧みに織り交ぜ、身も心も全て曝け出し、行き場のない衝動、時には暴力を切り取った衝撃作。
    (上演時間1時間55分)

    ネタバレBOX

    中央に大きなベットが置かれ 周りに飾り箪笥等、下手側に小スペース。この部屋への出入り口は上手側にあるという設定。物語は大別すると、兄弟による反社会的というか悪事で成り立っている。第1に兄がこの部屋(ベット)に監禁している少女との痴態、第2は弟が刑務所から出所し昔の悪友へ脅迫的な行為を行っている、この2つで構成されている。それぞれが独立したように物語が展開していくが、兄弟が久しぶりに再会したことによって転げ落ちるような嫌悪感を増す。

    冒頭、兄・藤谷ミキオがベットが置かれている部屋に来て、1人の女の子と性行為をする。そのベットを囲むように他の女の子が凝視している。この部屋の壁や床はペンキで青く塗られていて、誰が名付けたのかこの部屋は《ビーチ》と呼ばれていた。
    《ビーチ》にはセーラー服、ナース服やミニスカポリスなど、安っぽいコスプレをした女たちが共同で生活している。毎日夜になるとミキオがビーチにやってきてランダムに女を呼ぶ。実話をモチーフに、狂気とエロスをどぎつくプンプンさせながら描いている。

    観せ方は妄想のような描き方であるが、実は1役8人(多重人格風)で演じることで(監禁)年数を刻む。少女のコスプレ風の衣装は、彼女の年齢やミキオの趣向を表現している。一方、ある小物を利用して彼女の精神的な成長―自分による構築した他者(人格)との交流が垣間見える。それは日記を記することによって更に自己との対話を図り記憶の底を探る行為のように長じていく。だから物語の進展とともに少女の心の深淵が浮かび上がる。
    一方、弟は直接的な(暴力)行為はしないが、精神的な圧迫・脅迫によって相手にダメージを与える。この兄弟が交錯することでノワール感が倍加する。何より この兄弟の生い立ちはどうなのか気になるところだが…。

    この公演、色々な意味で刺激的であった。概観は嫌悪感あるように思える。が、それでも醜悪で汚らしく、猥褻で退廃的、残酷で倒錯的という、反良識、反社会の芸術(もちろん演劇も含まれる)は、世の中の反発や弾圧に遭いながらも一定数の愛好者を獲得し、連綿と支えられているのも事実ではなかろうか。その作品は悪趣味だと思いながらも、なぜか強く惹かれる。おぞましいけれども否定しようもなく、人の心の中にある歪みと狂気をこっそり覗き確かめたくなる。まさに本公演の真骨頂を観たようだ。自分の中の”狂気じみた”何かが蠢いたような気がした。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2021/02/09 20:50

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