墓場なき死者 公演情報 オフィスコットーネ「墓場なき死者」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    珍しいサルトルのしかもあまり知られていない(自分も不知であった)戯曲と、俳優陣につられて観劇。今の日本のある種の暗闇に光を注ぐ作品をよく見つけた。ピッタリだ、と思った。
    物理的な困難にとどまらず不穏な音を響かせてるコロナの浸食と政府の愚策・無策は、社会と人とを無音で傷つけてくる。為政者自身が傷を負う事から逃れ、民同士を傷つけ合わせている。
    暗鬱な状況を明るいフィクションで慰撫する事も演劇には出来るだろう。が、人間の精神が蝕まれていくこの言いようのない暗鬱には、闇をさらに深掘りする事でしか慰されない部分があるとも感じる。

    もっとも、読み取りに不備があった。フランス人同士の攻防とは気づかず、僻地で忠誠心の薄れた敗北目前のドイツ兵と見ていた(無言の見張り兵がレジスタンスの「説得の時間」部屋に残ったのも、仏語が解らないからかと..)。後に合点の行った箇所が多々あるが、仏人民兵とレジスタンスつまり同国人の闘争だと早く察知していたら、芝居の緊迫感は別物に感じたかも・・(哲学的問いの試験場として観た可能性も)とも想像する。
    だがどちらにせよ人間が一秒一秒と刻む時間に随伴して離れることのない行動とその根拠を与えるための思考が、本質的には血を流す闘いそのものに等しいことをこの戯曲の台詞は思わせる。自己省察と自他の心理への鋭利な斬り込みが、人間の思想と行動ひいては存在の空疎さに肉薄して痛ましいが、何故かそこに自分は救いを見る。全てを失ったと気付いた瞬間にしか訪れない、ある何か(希望?)が、人間に残された真の救い・・といったような。。

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    2021/02/08 08:54

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