満足度★★★★★
鑑賞日2021/02/01 (月) 19:00
座席A列7番
墓場なき死者たち。墓場のない死者になろうかという者にとって、死にゆく瞬間における自意識の高まり、唯一無二の自我への執着、消失されゆく自己存在への哀切、そこには目くるめく様な煩悶と懊悩が渦巻いているのだろう。
パンフレットを読むと、そこかしこに「自尊心」という言葉が出てくる。
自尊心と聞いて、そこに崇高な精神性を求める向きが一般だが、(パンフでも、その意味で「自尊心を持って守りたいもの」を出演者に聞いていた)、一方で「自尊心が高すぎる」という揶揄もある。パンフでは、翻訳の岩切正一郎が、この舞台を自尊心の球の闘いとした趣で語っている。ただし、卑怯者と呼ばれないための自己正当化として。
犬死には嫌だ。生きていた証を残したい。そんなレジスタンス達の物語。何のカタルシスもなく、理想も理念もない。ただ、そこには殺し殺される者同士の、自己正当化だ。民兵たちは、連合国の侵攻に恐れおののきながら、今の優位に身を委ねている。レジスタンスは、卑怯者にならないための自己賛美を朗々と謳う。
何も救われない、物語。