眠れない夜なんてない 公演情報 青年団「眠れない夜なんてない」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    転換なし、音楽なし、セミパブリックスペースで様々な人々がすれ違いながら、その世界が見えてくる。平田オリザのスタイルが貫かれている。音楽については、舞台設定の時代(1988年の昭和天皇のご病気時代)に流行った歌のカセットと、初老の男たちが歌う懐かしの軍歌(!)、「ハイマオの歌」はある。

    考えてみれば、平田氏は海外の日本人を書くのが好きだ。「ソウル市民」からそうだったし、新・旧「冒険王」はイスタンブールのバックパッカー宿にたむろする日韓の若者たちだった。「その森の奥」はマダガスカルの研究所。これらは、日本人以外も出てきて、いわば国際性があるが、今回は外国なのに、日本人だけの「老後マンション」で、日本論がいっそう前面に感じられる。
    「日本がどこまでも追いかけてくる」とか「帰りたくない」とか、嫌うことも含めて、「日本」をつねに意識している人たち。

    2008年初演時の設定を大きく変え、1988年の天皇重態の「自粛」に時代を置き、今のコロナの感染予防の自粛・制限と重ねている。これは見事な設定である。

    ネタバレBOX

    40代から60代の登場人物が、しっかり戦争体験者であるというのも、今から見ると「そんな時代があったんだなあ」という感慨を覚えた。80年代は私が20代だったわけだが、その時代、今の私くらいの年齢の男女はみな戦争体験者だったんだなあという感慨である。

    時代をずらしたせいか、登場人物が、女子高校生時代にチューインバムをパシリで買わされていたというのは、1955年くらいのことになるけど、そんなこと、この時代にあったのだろうか。「ひきこもり」という言葉も出てくるが、この言葉が言われ始めるのは、90年代以降である。

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    2021/01/26 18:08

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