満足度★★★★
冒頭、政治評論家(佐藤B作)がコロナ禍の体温測定で「37度4部」だったという設定から笑えた。現在只今のコロナを舞台に乗せて笑いのネタにしてしまうとは、何たる大胆不敵。さらに学術会議の任命拒否の裏情報をめぐる、メディア内の興奮と忖度と萎縮を見事に芝居にしていた。
評論家の翻心のきっかけに少しオカルトを使っていた。超自然現象を取り入れるとはご都合主義ではないかと思ったが、考えてみれば、評論家の抑圧された本心が無意識に現れたものとも取れる。ギリギリの線を攻めてきた際どい作劇である。
編集権を経営者から報道の現場が取り戻せ、そのための記者たちの話し合いをと語る。永井愛にしては珍しくストレートな訴えで、よほどの危機感なのであろう。笑いをまぶした社会批判劇といい、井上ひさし劇をほうふつさせる秀作である。