満足度★★★
『キズツクキカイ』
妖怪たちと共に暮らす陰陽師一家の次男坊を主人公に、人の心の「痛み」を描いていく。
個性的な登場人物がたくさん登場し、笑いも多めに散りばめられ、怒涛の展開から目が離せない楽しい舞台なのだけれど、観ていていろいろ染みてきたりもする。
きっと、キズミがいなくても私たちは傷付いてる。傷付いていながら、それに気づかないフリをしている。だからたぶんキズミがいることで救われる何かもあるのだろう。
そういう意味で、妖怪たちと共存する陰陽師である明神家の立ち位置と退魔師の正義とのすれ違いのどちらにもそれぞれの理があるのかもしれないと感じられる。
主人公の描く物語。それぞれの思い描く「こうありたい自分」。相手に対する、あるいは自分に対するたくさんの思い込み。立場ごとに抱える「正義」。そういう抽象的なアレコレが眼に見える形で舞台上で繰り広げられる。
陽気な妖怪たちと暮らす彼らのように、さまざまな傷や痛みとともに私たちは暮らしているんだろう。観終わってそんなことを思った。