[Go Toイベント]詩X劇 フクシマの屈折率 公演情報 遊戯空間「[Go Toイベント]詩X劇 フクシマの屈折率」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    「言葉」という 力 を舞台_その構図と構成に巧みに取り込んで描いた詩×劇。語られる内容は、現実に起ったこと、現在進行形で起きている試練を時間の流れの中で具象・抽象を混在して観客の意識を刺激する。焦点は現在の状況であるが、この作品が不透明な現代において普遍性を確認するのは、もう少し時間がかかるだろう。
    和合亮一氏のテキストを篠本賢一氏の構成・演出によって、舞台ならではの美術・技術で視覚・聴覚に印象付ける。まさに演劇の面白さを再確認させられたようだ。
    (上演時間1時間15分)

    ネタバレBOX

    暗幕で囲った舞台美術はシンプルで上手・下手側にそれぞれ4つの白い箱馬が並び、上手側の演じ場と区切る形で演奏(キーボードとチェロ)ブースがある。演奏といっても音響鐘に続いてスタッカートで効果音を奏でる、その響きが物悲しく思えるのは錯覚であろうか。天井からは目に見えない放射能、ウイルスをイメージさせるオブジェが吊るされている。下手側には誰も座らない椅子が一脚置かれ、時々 暖色照明を照らす。フクシマという遠隔地にいる人との語らいか、または行方不明者や死者との魂の共鳴をイメージさせるのか。
    出演者の衣装は男性1名が黒、女性8名が白で、何となく防護服を連想させる。舞台全体がモノトーン、出演者は客席後方から静々と歩いてくる。その姿は重厚感と同時に悲愴感を漂わせている。

    語られるのは、2011年3月の東日本大震災(原発汚染)、現在も収束していない新型コロナウイルス・covid-19、さらに九州地方を断続的に襲った豪雨による災害。特に原発と新型コロナは、目に見えない不安・脅威に脅かされている人々の苦悩と悲哀を”言葉”と”パフォーマンス”で印象深く伝える。しかし、その描き方は世情の委縮や閉塞といった静観するものではなく、役者が次々に箱馬の上に乗り飛んだり跳ねたりといった動作。さらに舞台中央でサークルを成し、上衣を振り上げる動作が不安・不満を表すと同時に、それらを払拭しようとする。その動態が生きようとする人間の逞しさを表現している。さらに三者の声…男優・女優そしてナレーションはそれぞれの内なる思い、本音(主観)と現実(客観)を表現する。冒頭にある「言葉を失う」「言葉が見つからない」といった詩ならではの台詞が重く、終始 圧迫感ある雰囲気を漂わす。
    が、苦悩等は弱いもの者から顕わになる、しかし明けない夜はないと救いもある。その意味で、この公演は人間賛歌を謳ったものと言えるのではないか。

    最後にこの作品は、現代において観るべき”価値”が発揮される。時代を経ることによって、例えば10年後に観た時は、また違った印象を持つのではないか。そこに演劇の特長的な魅力があると思う。違った印象=変化とは、我々の「現実生活」であり、新しい形と内容の”現代”に直面しているであろう。だから観るべき時は今が一番よく解るであろうから。同時に現実の帰結を洞察しつつ、未来をも見据えようとするベクトルも感じられるところが素晴らしい。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2020/12/06 11:33

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  • ご来場ありがとうございました。さらに大変丁寧なご感想をお寄せ頂き、演出の意図を的確に汲み取って頂いたことも嬉しく、一同の励みになりました。今後も総合芸術としての演劇の面白さを追求し、皆さまのご期待に添えるような作品創りに努めてまいります。

    2020/12/07 12:09

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