月曜日の朝、わたしは静かに叫び声をあげた 公演情報 甲斐ファクトリー「月曜日の朝、わたしは静かに叫び声をあげた」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    人間心理の残酷さ脆さを掘り起こすタブーを描いた異色作。心・脳内ーその記憶喪失と記憶再生を斬新に”視覚化”した異色のサスペンス劇といった印象である。多くの文学作品を思わせる台詞、例えば「今日も太陽はムダに輝く」等は有名な小説を示唆している。ある指向性を思わせるが、表層的には若い女性の心象風景_毎日変わらない当たり前の暮らしが一変する。この変化も有名な小説をイメージさせる。公演は、2つの物語を並行と交錯によって重層的に描こうとしているが、その関連性が少し弱いような…。
    それでも根底にあるのは、「人間」への限りない興味、そのことを十分に思わせる作品だ。
    (上演時間1時間30分)

    ネタバレBOX

    舞台は大小4つのBOX、それを場面に応じて配置や向きを変えることで情景や状況の変化を表現させる。物語はコロナ禍のオフィス、そこで働くベテラン営業社員が突然他の女性に自分の人生を奪われる。自分の名を名乗り、会社同僚を始め恋人にまで無視される。自分は何者なのか?アイデンティティを奪われた悲哀、喪失、絶望が記憶の扉を閉じる。

    同時(並行的)に、自分らしさ、性癖(女装趣味)や性好み(同性愛等)などマイノリティの課題を描くこと、この2つの物語は自分自身と向き合う といった共通項は観られるが、その関連性というかストーリーの絡みが、互いを支え合ったように思えない。それぞれが独立した2つの物語という印象が強く、重層性を抽出しきれなかったのが残念。とは言え、物語るサスペンスフルな描き方は巧みだ。イメージの喚起力ある構成だけに、2つの物語が有機的に関連付けできれば もっと印象深い作品になっただろう。

    物語は学生(小学生か中学生?)時代、何気なく発した言葉によって傷つけられた女性が恨みを晴らすため、当人の人生を奪うといった復讐劇であるが、何となく逆恨みのような展開_過剰反応、ナルシスト的な思いが暴走し…。
    コロナ禍の職場状況を垣間見せ、従来の半拘束的勤務形態(通勤時間む含め)と今 ソーシャルディスタンスという名目でテレワークが導入。今までの不自由さから解放され、ある程度自由度が広がった現況、自由時間が多くなった分、いろいろな事を思い巡らす。その中には嫌な思い出等、嫌悪・非情が露出する、ある種のノワール劇といったところ。

    キャストは総じて若いが、その中に時代劇であれば口入れ屋的な存在の男が実に飄々とした振る舞いと とぼけた味わいが印象的であった。登場人物は個性豊かに演じており、全体的にはバランスよく表現していたと思う。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2020/11/29 12:45

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