You'll Never Walk Alone 公演情報 青春事情「You'll Never Walk Alone」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    観客を楽しませよう、応援しようとする、そんな温かみを感じさせる公演。まさしく”僕らはひとりぼっちなんかじゃない”が実感できる好公演。
    「サッカーのサポーター達の悲喜こもごもを、実際にスタジアムで歌われる応援歌(チャント)に乗せて贈る、青春事情的ミュージカルコメディー!!」の謳い文句通りの面白さ。

    この公演の観せ方は、サッカー観戦を通じて三方向の観点を思わせる。第1は物語としてサッカーフィールド内への応援風景、第2は、舞台のスタジアムスタンドから客席に向けた応援、第3に物語にも出てくる街興し。物語としての観せ方は当たり前かもしれないが、第2の観点は、サッカースタジアム、通称:味スタのスタンドで応援するサポーター、その姿を通してコロナ禍の疲弊、閉塞した状況を少しでも明るくしようとする熱狂ぶりが客席への応援歌に思えたこと。第3の街興しは、2011年_第2回せんがわ劇場演劇コンクールのグランプリとオーディエンス賞のW受賞との説明。たしか第3回目までは「調布」という地にちなんだテーマを持つコンクールであったことから、本公演も登場人物の前向きな姿と同時に地域の街興しを思わせる場面があったと思う。コンクールは、上演時間40分内という制限があったと思うが、本公演は新たなシーンを加えての再演だ。コロナ禍での再演は、いろいろな意味での応援歌として意義あるもの。
    理屈抜きに楽しめる、まさしくエンターテイメント作品の本領発揮といった印象を持った。
    (上演時間1時間30分)

    ネタバレBOX

    舞台セットは極めてシンプルで3段程度のミニ階段状の置台が3つ。もちろんサッカースタジアムの観客席をイメージさせる。そうなると観劇している客席側はスタジアムのフィールドとなり、観客が応援されている構図にも受け取れる。

    物語は4組(保険会社の先輩後輩、ライブハウスの男・女従業員、姉と弟、そして理容院の夫婦と客)のサポータを緩い繋がり、いや繋がりと言えるほど顔見知りではなく、単にサッカーの試合チケットをもらい、何の気なしに出かけた。しかし熱狂的なサポーターの真剣(時にはヤジも)さに いつの間にか影響され興奮している自分がいる。同時にスタジアムには行けないが、店(理容院)の営業そっちのけでTV観戦している夫婦の会話を通して、商売ではライバル店であっても、サッカーサポーターとしては仲間だ。そう言い切るところに、街興しを思わせる。まさしく”せんがわ劇場演劇コンクール”の地域性ある作品を思わせる。サッカー観戦の過程で、各人が抱えている漠然とした不安や悩みが自然と昇華(消化)していくような…。まさしく僕らはひとりぼっちなんかではなく、何かに夢中、熱中することで日頃の憂さを晴らすことができるのかもしれない。試合結果によっては、翌週の気分の良し悪しに影響するというオチも描く。

    コロナ禍…上演することが難しい状況下だけに、劇場で観られたことは嬉しい。それゆえ、先に記したが劇場客席をフールドと見なし、コロナ禍の萎縮・停滞・諦念といった暗い状況、やるせ無さを共有している観客への応援歌(チャント)にも聞こえ、元気付けされた気分である。
    キャストの豊かな表情、見知らぬ にわかサポーター同士の絶妙なタイミンングの呼応台詞が笑いを誘う。大きな劇的結末はないが、仄々とした余韻が心地良い。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2020/11/27 18:49

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