アルマゲドンの夢 公演情報 新国立劇場「アルマゲドンの夢」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    映像を駆使した演出でビジュアル面で健闘していた。電車内のシーンで周囲に車窓風景を流す。クーパーの自室の最初、紛争や貧困の映像を、妻のベラが引く海辺のカーテンで覆い隠すところにも、偽りの平穏への批評が見える。夫婦のベッドシーンも映像も使って少々扇情的に見せて見応えあった。ワーグナーの「タンホイザー」の地下の悦楽の園で、男女の数多の裸体が絡む、刺激的な演出には及ばないけれど。

    白い仮面と防弾チョッキとマシンガン持った「スター・ウオーズ」のクローン兵の戯画も頑張っていた。

    ただ全体としては中傷的で、感情的には入りにくい。観客の拍手も(さすがにブーイングはなかったが)戸惑い気味で勢いがなかった。最後は拍手も高まったが、この難解な作品を演じ切った労いの拍手のようだった。音楽も現代音楽の難解さを突っ走っていた。全体主義への危機感や、悪夢のような現実への無力感などコロナ禍重なるところもあった。

    コロナの中、歌手陣も来日できてよかった。客席も100%販売していた。

    ネタバレBOX

    夫のクーパーがベッドでも、戦いに赴くかどうかのビーチでも、妻のベラにひっぱられて受動的。ここはテノール役によくある優柔不断なダメ男の系譜を受け継いでいた。だからクーパーを破滅させたのはベラであり、彼女は悪女ということになる。そのせいか、彼女はクーパーに撃たれて死ぬ。ただ、なぜ彼が妻を殺したのか、突然の出来事で、理由がわからなかった。

    終幕のボーイソプラノの清浄な神を讃える歌声が美しかった。カーテンコールの拍手も多かった。「アルマゲドンを起こしてくれたことへのかんしゃ」もあった。すると人間の滅亡を讃えたことにならないか。人類が死に絶えた後の平和を讃美するかのようだった。

    0

    2020/11/21 22:48

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大