The last night recipe 公演情報 iaku「The last night recipe」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    題名の『The last night recipe』は最後の晩餐という意味だという。舞台は、結婚して1年後に、妻のヨリが夕食を食べた晩に急死するところから始まる。その日、彼女はコロナのワクチンを受けていた。接種体験込みの体当たり取材を担当していたのだ。
    周囲の達者な役者たちのせいで、ずいぶんとリアルな近未来劇(2021年)になっていた。相変わらず役者の出捌けが巧みで舞台転換が上手い。
    コロナ禍のせいで常連客が減り店を閉めたラーメン屋の店主(緒方晋)はリョウヘイの父、会社を早期退職したヨリの父親(福本伸一)は娘が可愛いばかりでちょっと頼りない。リモートワークで経理の仕事をしながら大黒柱になるヨリの母親(竹内都子)の本音トークが小気味よい。ヨリの相談に乗ってくれている先輩ライターの綾(伊藤えりこ)、ヨリが猛アタックして恋人になった得意先のハヤタさん(小松勇司)。
    中卒でずっとラーメン屋の下働きをさせられていたリョウヘイに興味を持ち、この取材対象と突如結婚してしまったヨリ。彼女は30歳を前にフリーライターの正念場で少し焦っていた。
    何を考えているのか解らないこの二人の、突拍子もない行動、あるいは何も行動しない、そのことに観ている方はまるで感情移入できず、困った。
    コロナワクチンの薬害か、取材のために結婚させられた夫による殺人か、舞台はサスペンスタッチで進むかに見えたが、ユリの急死の前の出来事とその後が行きつ戻りつしながら物語は新たな様相を見せ始める。
    ヨリは結婚生活での二人の夕食を last night recipeとしてブログにアップしていた。この同じメニューをもう一度食べてみて、リョウヘイはラーメン屋の父の許に帰る決意をする。
    もう以前のように、人と会い、喋り、食事を共にしても、コロナ禍の後では、そのことの意味は全然変わってしまっているんだと、私は感じた。
    人気劇団の新作舞台、観て戸惑った観客が多かったようだ。

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    2020/11/11 10:06

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