忖度裁判 公演情報 ワンツーワークス「忖度裁判」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2020/11/05 (木) 14:00

    その忖度、誰のためですか?と問い続けた2時間。
    ストップモーションの動きが、思考停止のようで印象的。
    いじめも結局は忖度の果てのひとつか、と思われた。
    裁判員6番の迫力に一票!

    ネタバレBOX

    お受験ママ友同士だったのに、そのママ友の娘を自分の車に乗せ
    放置して死なせたという裁判が開かれる。
    本当に雑事に紛れて、乗せていることを忘れてしまったのか、
    ママ友に対する嫌がらせだったのか、
    ライバルの子を、殺意を持って放置したのか・・・。
    集められた裁判員6名、補充裁判員3名はそれぞれ本名を名乗らず
    番号で呼び合っている。
    世間が注目する、マスコミも注目する、判決には前例がある・・・。
    緊張し、翻弄され、忖度だか先入観だかもうわからなくなっていく裁判員たち。

    中で6番(奥村洋治)の家庭でのやり取りが挿入されるのがミソ。
    彼の娘は職場でいじめに遭っている。
    ある時娘は父親に職場の写真を見せる。
    この中の全員が彼女を無視しているのだと言う。
    そこに写っている上司は、裁判員3番の男だった。
    「自分で何とかする」と言い張る娘、娘にまかせようという妻。
    だが父親はある方法で3番の男に立ち向かう。

    法廷ものの群像劇としては、バラエティに富んだキャラや
    裁判のシステムを上手く説明していて、楽しめる。
    最も影響力のある忖度をしている人物は
    裁判長をはじめとする裁判官側ではないか。
    世間の注目度や過去の判決事例を、合理的と言えば言えなくもないが
    常にバランスを取ろうと躍起になっている。
    中道路線から外れまいとするように見える。

    さて、職場でいじめを受けている娘をどうやって助けようか。
    父親である6番はどれほど知恵を絞ったことだろう。
    その結果が、裁判の休憩時間に語られる「夢の話」だ。
    誰かを罵倒し続ける夢を見る、という彼の話は最終日
    「昨日あなたが夢に出て来た」と、3番の男に向けられる。

    裁判員たちを、常に上から目線で仕切り続けた3番の男は、
    完膚なきまでに論理の皮をひん剥かれ、罵られる。
    この迫力が素晴らしい。
    誰かを守ろうと闘う強さに溢れている。

    法廷と並行して、この6番の娘のいじめを持ってきたことにより
    罪の意識の無い“忖度”が急に身近になる。
    いじめる部下たちは、この上司である3番の男に忖度している。
    同僚たちにも忖度している。
    忖度の連鎖は、やがて一人の人間の命を追いつめるかもしれない。
    父親の罵声には、その危機感があふれていて、それが
    単なる罵声でなく、正当な批判として突き刺さる。

    「自分で何とかする」という娘の気持を尊重したいという
    父としての“究極の忖度”がここにはある。
    その忖度の強い優しさに打たれる。


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    2020/11/08 01:03

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