農園ぱらだいす 公演情報 劇団匂組「農園ぱらだいす」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    昨年知ったばかりの匂組の2作目は、配信で見た。
    前作は大逆事件で処刑される事となる女性を扱ったドラマであったが、今回は現代劇。女性目線のより濃い出戻り女性の集うある関東圏の農村でのお話。「アマゾネス」と自らを喩える台詞があり、傷を持つ者同士の健気な連帯の世界観もみえるが、その彼女らも若いイケメンの芸大建築学者が「都市近郊家屋の研究」と称して物件巡りに訪れるや一様に目の色を変えるという(女性目線的には)「自虐」表現もあり。
    台詞が危うく感じたのは台本の上りが遅かったのか、千秋楽に映像配信で固くなったか。確かに説明的なくだりの多い台本ではあったが、瑕疵を拭って余る清々しい劇であった。

    ネタバレBOX

    ドラマの軸は、ネギ作りで成果を上げる(農村では稀少な)30代後半の男性と、夫を亡くした母の元に戻った会社勤務の「行き後れ」(男性と高校時代の同級生)の二人の恋愛?である。二人を取り巻く状況や人物との絡みが微妙に効いている。また東京直通の電車が通った最近の交通事情もリアルに反映されていたり、映画好きの女性(高校時代の部活は映画部)は夢遂げて映画会社に勤めるも事務部署では意味があるのかと揺らいでいたり、大半が高齢者の村人は二人を村の行事(祭礼)の準備係と巫女役にあてがい、結ばせて村に定着させようとしているといった噂等、珍しくもない話が折り重なり「乗っかれる」素地を作る。終始物分かりよい「聞き役」だった女性が最後にむきになる場面が、リアルの図を完成させる最後のピースとなる。女性は高校時代から実はこの男性に惹かれているが別の同級生を好いている、だから(その相手は既婚)独身を通している位に思っている。その既婚女性は明るく社交的で男も味方にする、その手管を作者は開陳してもいるが、種を明かせば男
    性はわが主人公たる女性を思う人なのであった。この男性が本腰を入れてアプローチを掛けようしたその時、30代後半のこの女性はそれを敏感に感じ取り、馬鹿じゃないのと拒絶し何故か捲し立てる。ここには社会経験のある女性の色恋沙汰に浮かれる愚かさへの実感や、プライドや、孤独や破綻に耐えた半生を安易に慰撫される事への拒絶等々が滲み、唖然とする周囲の者らの反応とは別に観客は裏の表情を見てとる。その後のゆったりとした二人の会話のシーンで幕は閉じるが、アラフォーらしい距離感の台詞もうまい。

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    2020/11/05 02:08

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