満足度★★★★
ここ数年、見るたびに期待を裏切られなかったiaku横山拓也の新作。市松客席での公演だが満席。もう入れてもいいじゃないか。当日券なしでは客いじめも極まれりである。
今回は突如内容を、コロナものに変更した由で、底が浅くなった。リアルを追求したい若い女性ライターが、実生活でもリアルを体験したいと結婚までしてみる、という話である。コロナで頻発した突然死を将来のワクチンに絡ませて枠取りにしているが、この二つの趣向が練れていない。時事ネタをとりました、と言うだけに終わっている。
芝居のつくりは例によってうまいもので、最初のいかにも大阪らしい会話(東京の客席はあまり笑わないが)や、女性ライター同士のやり取り、一人娘と一人息子という設定や、親のキャラなど手慣れたものだが、上滑りしていてつまらない。一番の問題はラーメン屋の息子で、このキャラが今一つはっきりしないので、周囲がくっきりしない。今問題の80‐50問題などもうまくやればもっと面白く仕組めるのに、と残念。うまいと言ってもいつもいい作品ができるわけではない。そんなことになったら芝居ものは皆めしの食い上げ、客も今度はどうだろうという興味を失くす。この作者、劇団は超高打率だったのだから、自戒を大いに期待しよう。今回は話が無理筋だった。