満足度★★★
ある若い夫婦で妻の突然死から始まる。舞台は生前の回想と死後の現在を行き来する。現在と言っても、亡くなったのは2021年3月4日なので実は未来。
ヨリは女性ライターとして、ルポの本を出したくて、父親のラーメン屋で無給で働かされていた良平の「不幸」な生活を取材し始める。ルポがなかなかうまく書けず、「相手の懐に飛び込むため」駆け落ちのように良平と結婚する。が、無口でおとなしく、魅力もない良平との結婚は、非常に無理がある。結婚しなくても、ルームシェアでいいんじゃないかとか。観客も、ヨリの周囲も、全然ついていけない(と思う)。
美人で活発なヨリが、風采の上がらない中卒男にプロポーズとは。
その謎が最後に解かれる。遠くの目標ばかり見つめて、足元の日常を見失っている現代人への、優しいメッセージが胸に残った。
ヨリの死は、ワクチンの接種の夜ということで、薬害が考えられる。先輩ライターのアヤがその疑惑を追おうとするが、あまり話は深入りしない。それよりもヨリと良平の「常軌を逸した」結婚生活、1年と1月を、見つめ直すことに芝居の中心がある。