満足度★★★★★
「少年Bのいる家」罪を犯した息子を持った母親と父親の、言うに言われぬ感情、迷い、鬱屈、煩悶。それが、俳優たちの所作と表情の端々にかんじられて、人ごとでなく前のめりに見てしまった。セリフが意外と少なく、間の多い芝居だし、小さな声で喋る場面に、結構惹きつけられた。
「どうして」という問いの繰り返しから、これは「不幸が私たちのところに来たんだ」という母親、聖書の「ヤコブの相撲」の話をする保護監察官。そうしたところに、救いの可能性が感じられ、見終わって、気持ちが浄化されたようなじんわりした清々しさがあった。
俳優諸氏も自然かつ抑えた演技で、優れたリアリズム演劇だった。特に、問題を抱えながら、それに触れるのを避けて、家族同士がぎこちない前半がリアルだった