満足度★★★★
朝鮮人、浮浪児を見下し虐待する日本人舎監たち(内田竜磨、山口眞司)。しかし院長(山口)の娘(伊藤安那)は、若さゆえの純粋さで、海で自分を助けてくれた院生567号(西山聖了。名前もなく、番号で呼ばれる)に優しく接し、熱心に本を読ませる。特にデミアンの「生まれ出ようとするものは、一つの世界を破壊しなければならない」がの一節を何度も。箸の使い方も教える。
しかも567号の愚鈍さ、いじけた性格は、生き残るための芝居で、実は頭の良い少年だった。心を通わせ始める二人。
しかし、それは長続きせず、567号は生き地獄のような孤児院に連れ戻される。
母親(清水直子)が壁面に合間合間にくくりつけて増やすノイバラは、人間性を取り戻す576番を象徴するのかと思うと、全く違う意味がクライマックスで明らかになる。
デミアンの一節が、567号=カン・テスの決断を象徴する言葉になる。
日帝時代にあった、脱走困難な孤島の孤児院「仙甘学院」をモチーフに、日本の朝鮮支配の罪を告発する舞台。二人の男同士の蔑みと反抗、支配と服従の逆転も描き、小品ながら濃密な作品。
舞台中央に開けた矩形の穴が、学院への抜け穴になったり、棺になったり。この作品がどこか違う世界とつながっているような、あるいは地底の底に降りていくような、垂直方向の世界観を視覚化してくれた。