満足度★★★★
3人で演じる別役実作「マッチ売り」、弟役が透明で声は録音か(台詞を別に処理していたか忘れた)。ほぼ戯曲の通りであったと思う。老夫婦の元を訪れる「女」は壁際に離れ、お茶をよばれる。立ち位置は実際の距離を表わさず、弟の存在は「実はいないのかも知れない」(共同幻想?)想定も可能であり、さらに外に寝かせてある二人の赤子の事も妄想か、と自由解釈できる作り。そうした処理は土台を失い抽象画の域に行きかねない所、実体を与えているのが俳優の声・佇まいで、この上演でも本戯曲は成立していた。
夫婦が茶を飲む折り畳み式テーブル(ハイキングとかで使いそうな)は最後は折りたたまれて「妻」役の男優が持ち去るが、そのタイミングは夫が「女」の過去の商売の客であった疑惑が語られるあたりなので、それへのリアクションと見えなくなく、夫はその場に残されるので、あるニュアンスが見えたり、戯曲解釈を遊んだ形跡があった。別役氏が紡ぐ「小市民」の老夫婦の言葉遣いも不意の来客(女)への対し方も、改めて味わい深く噛みしめた。