満足度★★★★
杉並区の助成を受けての公演らしいが、良い意味で役所好みの作風だ。原作はチェーホフで古典ということになるが、経過を感じさせず、スリリングで気品高く仕上がっていると思う。
私の鑑賞した回は客席の数が3人であった。ウィルスの蔓延を防ぐためだろう。それに対しての「一人芝居」だから、やる方も気を張るし、観ている方も気を張る。
壇上に「タバコの害について」と掲げられており、講演会を模したつくりになっている。いかんせん、「インテリゲンチャ」風情の男性が学問とは関わりのない私事を身振り手振りで訴えるシーンの連続は不条理だ。
終演後の「ダメ出し」で明らかになったのだが、長い円筒で秘密を嘆くシーンすら、細かく演出されている。ということは客席のパターンだけ、バリエーションを用意している、 ということだ。さらに興味深かったのは演出家の絶対性だ。ある意味、正統なのだが、的確な一言で役者がそれに試行錯誤する即応には良い意味で脱帽せざるを得ない。ロングランにもかかわらず、毎終演後こうした調整をしているのだとすれば、やはり双方を労わずにはいられない。