満足度★★★★
おなじみのディスカッション劇である。もう何度も見たが、何度見ても面白い。陪審員が十二人。問われた裁判は、少年の父親殺し。ニューヨーク下町の貧しい家庭の犯罪である。有罪対無罪の比率が最初は11対1.これが話し合ううちに次第に無罪へ変わっていく。陪審員番号8号、映画ではヘンリーフォンダが演じたおいしい役を堤真一が演じる。今回のキャスティングは、いろいろなところから面白い俳優を集めている。山崎一のような意外な役柄もあるし、絵で書いたようにハマった石丸幹二、溝渕淳平。柄で説明しきったような青山達三、永山絢斗,それぞれ役の味に本人のガラも加えて健闘しているのだが、どこか物足りない。演出が英国人の為かと紹介文を見ると、コロナ騒ぎで来日せず、リモートで、映像を見ての演出だった由。これでは、演出側も、俳優側も一応の動きになってしまって。行き届かない。生身の人間で切り結ばないと、お互い豆腐を切っているようで歯がゆかったに違いない。言葉が分かる、解らないの問題ではない。舞台に肉感が乏しくなってしまう。それでも、おもしろいのは脚本の功だろうが、今回は50年代のニューヨーク下町の陪審員の生活感覚はかなり切られていて、話し合わなければならない、という事と、被疑者への偏見が、クローズアップされている。(戯曲を手にして見たわけではないので間違っていたら後免)今までの公演では、幕開きはニューヨークの下町のグランドノイズだったと思うが、今回は優しい音楽から入る。そういうところにも時代を感じた。休憩なしの2時間。