満足度★★★
鑑賞日2020/09/11 (金) 19:00
『わたしの耳』を観た。興味深いけど、ちょっと難しい芝居だった。翻訳劇ならではの問題点もあったかと思う。
ピーター・シェーファー1962年の作品。ロンドンに住む内気な青年ボブ(ウェンツ)はコンサートで隣に座ったドーリーン(趣里)が気に入り家の誘ったものの、どんな対応をしてよいか分からず職場の先輩テッド(岩崎う大)に手伝ってもらうが…という展開。英国留学帰り初舞台のウェンツが内気だが実はプライドの高い青年を好演。テッドやドーリーンとのズレが、イライラさせられるくらいのレベルである。
だが、本作は実は英国の階級制度をテーマにしたものではないかと思える。ボブは落ちぶれているが中産階級の出で、ドーリーンとテッドが労働者階級だと考えると、ズレや擦れ違いが理解されやすいように感じ。翻訳劇での「背景への理解」が必要な戯曲に思えた。加えてエンディングは、現代でレコードが衰退した現状を思うと、「耳」の力を前提とできないのではないかとも感じた。
客入れの曲は60年代のイギリスで聞かれていただろう曲を集めて雰囲気を作るのに役立っていたし、細かいところまで気を使った好演だったとは思う。