満足度★★★★
鑑賞日2020/08/10 (月) 14:00
古川さんことだ、南京事件を描こうということは、かなり前から決めていたことだろう。
そのタイミングがここということ。
「南京大虐殺」という虚構の廃絶に振り回されることなく、真摯にこの事件に向き合う姿勢はさすが。松井石根をただの善人あるいは理想論者として片づけない。
ただ、史実を洗いなおす過程で、彼から引き出せるものは、「南京攻略を急いだのは、私の野心のため」と言わせるのが精一杯と感じたのだろう。おそらく、彼を断罪するよりも、あるいは、いかに反省の弁をのべさせるかよりも、松井の罪業が理念と現実、清廉と非道の狭間でいかような様相を呈したのか、西尾氏の弁護士と、浅野氏の教誨師を配置することで描き出そうとしたのだと思う。松井は、ただただ彼らに回答を求めたのだ。そこに、この芝居の松井石根への、滔々とした残酷さを感じずにはいられない。
千秋楽、ラストコールでの西尾友樹氏の満面の笑みが、コロナ禍で活きる劇団員の矜持として印象に残った。