『ブラックアウト』 公演情報 singing dog「『ブラックアウト』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★







    このご時世に演劇をしたことを褒めたい。「自分を自分で」でじゃない。私が、だ。

    しかるに、前説を務めた主演役者(役名・鈴木)がマスク姿だったが、奥まで聞こえるように声を発すると赤ら顔になり、よせばいいのに「換気」と称してグルグル回るものだからぶっ倒れ!?リアルに患者に見えてしまった。

    それはさておき、アルコール依存症を治療する精神科病棟の一部始終と向き合う本作は、「揺れ」を見事に描いている。そこにいるのは特殊な人間たちではない。意志力に欠けるわけではない。ところが、知られていないことに、酒を前にして彼らを苦しめるのが「回復」である。
    どうも依存症というのを「辛くてもやめられない」といったように考えてしまうようだが、現実は違う。依存で落ちた能力だったり感情だったりを「一時的に」取り戻してくれるのだ。だから、薬物などの例をとるまでもなく、依存症は「正常への渇き」がもたらす作用なのである。

    逆にいえば、最も外見からして危ないのは「絶った直後」だ。そして、治るのは一生涯訪れない。この恐怖から来る本能的ストレスと、「一時的に」社会に適応する理性が、依存症をループにする。



    運び込まれた鈴木の人柄は「穏やかなオジさん」だ。酔って暴力をふるうなど、およそ想像つかないくらい、平凡すぎる平凡だ。まぁ、志村けんに似ていることから「変なオジさん」に見えなくもないが(笑)


    患者役の役者が本当のアルコール依存症「だった」らしいが、体験談として語るシーンは渦中にいた者しか吐けない「壮絶さ」であったと思う。まるで統合失調症のようだ。けれど、終わりがないことが依存症の正体だから、しっかり治療して退院した患者が みんなハッピーエンドとなるわけではないだろう。


    「専務」というあだ名で呼ばれていた患者は赤ら顔だったが、長期入院するわりに、腕が日焼けしていた。私は「色白さ」との対比が時間を経過付けてよい、と思ったが、確かにアルコール漬けというか、不可逆的に元には戻れない可能性はあるのかもしれない。


    患者たちは毎朝、看護師が支給する、アルコールと反応して強い発作をもたらす薬を飲まされる。つまり、「不自由の身」だ。手を出せば自滅となる。他人を傷つけているわけではない。犯罪行為をしたわけではない。壊れるのは自分だ。観客との分断がそこにある。

    彼らは究極の弱者である。


    隣の日高屋で瓶ビールを注文した私が真剣に述べることじゃないか、、、


    ※ちなみに 鈴木の過去を掘り起こしてドラマチックしてもいいかな

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    2020/08/06 17:50

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