無畏 公演情報 劇団チョコレートケーキ「無畏 」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    非常に衝撃的な作品。ドラマとして観れば平坦な作りだが、自分は論戦として受け止めた。
    東京裁判にて死刑となる、南京大虐殺の最高責任者、当時の陸軍大将松井石根(林竜三氏熱演)と弁護士との対話。
    このネタは時代が時代なら大揉めで酷い難癖をつけられていたことであろう。NNNドキュメント『南京事件』のような良作も糞味噌に言われる世の中なのだから。
    初フェイスシールドは思ったより悪くはなかった。ここまでして、舞台を演り、舞台を観る、というのが人間の面白い所。コロナを逆手に取った新しい観劇スタイルなんかが生まれてくるんだろうなあ。
    南京事件を扱った作品は巨匠チャン・イーモウ監督の『ザ・フラワーズ・オブ・ウォー』ですら黙殺される日本。(主演クリスチャン・ベール。韓国版Blu-rayにて日本語字幕有り。)
    「何故、自称愛国者達はこれらの事(従軍慰安婦問題など)を禁忌としたのか?」「これらが事実であると何がまずいのか?」そここそが日本人論の焦点。
    クライマックスの弁護士の詰問はド迫力。作者が時空を越えて松井石根を恫喝しているようにすら見えた。ここまでするか・・・。流石である。

    ネタバレBOX

    クライマックスからのエピローグが饒舌で冗長。各フォローのように見えて斬れ味が雑に。
    『私は知らない事であるが、全ての責任は立場上私が取る』という日本人的美学を作者は糾弾する。そんな悲劇の善人が断罪された物語では何も解決しない。それでは何も後世に教訓が生きない。その美学を剥ぎ取り、自らの無力さをさらけ出してこそ、何故こんなことになってしまったのかを考え始める礎となる。永遠のテーマであり、また必ず同じことが繰り返されるであろうから。
    大東亜共栄圏、もしくは大東亜協同体論などの理想を掲げて起きた出来事は「"大義‘’の過程において犠牲はやむを得ない。全ては輝かしき未来の為の瑣末事でしかない。」という詭弁にも感ずる。
    作家宮崎学氏が連合赤軍植垣康博氏の著書に寄せた一文、『目的は正しかったが、手段を間違えた』という言い分は誤りで、『間違った手段を選ばせるような目的はそもそもが間違っていたのではないか?』との考察を思い起こす。
    中国映画『南京!南京!』があの場の肌触りや空気感を巧く再現。自分がそこにいたら何を見てどんな気持ちになっていたのか?Amazonプライムなどの配信では日本語字幕付きで観れるのでこれもお薦め。

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    2020/08/03 23:03

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