赤鬼 公演情報 東京芸術劇場「赤鬼」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    海辺の寒村に、突然赤鬼(言葉の通じない異人)が現れ、パニックに陥る人々の動きがダイナミックで面白かった。足の長さの違う低い丸いテーブルを、足の枠と天板に分解して、洞窟の入口や、船など様々に見立てる趣向もうまかった。激しい嵐と、浜辺に遭難した3人を村人たちが見つけるシーンも、最初と、最後に繰り返されるが、巧みである。

     友人は、コロナという「未知への恐怖」を描いた新作かと思ったと言っていた。異物排除というテーマも、患者や医療関係者などへの差別と重なる部分がある。
     
     観た回はBチーム。とんび役の秋山遊楽が野田秀樹の甲高い声でちょこまかした演技を踏襲していて、面白かった。加治将樹は、前に舞台を見たことがあり、安心して見られた。浦杉恵子も、始まってすぐの群衆場面から、この人がヒロインだなと分かる華があった。姿勢が良く、凛とした雰囲気で、悲劇を背負うヒロインとしての可憐さがあった。

    「赤鬼」は以前一度見た。当時は記録もとっておらず記憶はあやふやだが、ネットの公演記録からすると、2004年の野田地図番外公演の日本ヴァージョンだと思われる。

    ネタバレBOX

    とにかく、かつて見て覚えているのは、海で遭難した女が、死んだ赤鬼の肉を、「フカヒレのスープ」といわれて食べて生き残ったということだけ。しかし、今回見て、過去の口コミなどを見ていたら、04年の公演では、その海のシーンはあまり印象に残らないあっさりした演出だったという。その前の異物排除、未知のものへの恐怖と差別を中心にした舞台だったと。

    そこで、私は疑問が起きた。何故そういう舞台を見て、私は逆に人肉食だけを覚えているのか。舞台を見ることは、重層的な舞台のどこに関心を持つかによって、自分を知ることだと改めて知る。シェイクスピアのいったように、「舞台は鏡」である。

    今回の舞台は、最初に謎のように「フカヒレのスープ」と女の身投げがある。最後に、最初からの流れを踏まえて、最初のシーンが繰り返され、その謎が解ける。04年の舞台と違って(多分)人肉食もしっかりフォーカスされている。
    「鬼が人を食べるんじゃなかったのね。人が鬼を食べるものだったのね」と言うセリフは重いし、非常に意味が深い。野蛮人を攻め滅ぼしたのは文明人だったこと。大航海時代以来の、ヨーロッパ人の長い征服と侵略の歴史が想起される。

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    2020/07/30 23:40

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