アンチフィクション 公演情報 DULL-COLORED POP「アンチフィクション」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    今ダルカラが劇場公演を。。と出掛けたら一人芝居だった。しかも谷氏自身による。上演は60分。存外濃いコンテンツに満足。ゆったりした客席にも慣れてきた(興行側は大変だろうが)。
    配信もあると聞いたが、映像向きと思われる「パッケージ」として完成度のあるもの、起承転結が明快な演劇らしい演劇ならともかく、「アンチフィクション」の題名から想像されるチャレンジングなのは狭雑物無しで見る(劇場で見る)選択肢以外思い付かなかった。
    病床の別役実氏が名取事務所(ペーター・ゲスナー演出)に書き下ろした「背骨パキパキ」を思い出す。結局出て来たのは戯曲というよりエッセーのコラージュのようなもので、作者の呟きのような文から夢想された場面で構成された舞台は不思議な趣きがあった。今回のアンチフィクションも作者の呟きがベースであるが、「全て本当にあった事、本当に起こる事」との前置きの真偽が揺らぐフィクション性高い後半のコンテンツまで、コロナ禍下の劇作家の生態という内容は、それが真実でも虚構でも、単純に面白かった。最初に「真実」を謳う事は必要だったろうが、俳優の体は舞台の時間のそれであり、演劇のそれであった。

    ネタバレBOX

    メニューを紹介すると、自己紹介的一人語り、劇作家同士悩みを語り合うリモート会議、酒浸りが家族に連日及ぼした実態紹介(ここは真実としてのインパクトあり)、歌(Fly me to the moon)、中原中也の詩、私的趣味で別宅に住まわせている若者との逸話、ユニコーンからの逃避行、等。秀逸な台詞は、昨年「福島三部作」に授与された岸田戯曲賞を「日本人の福島への罪悪感の表れ」と喝破する台詞、また優雅にコーヒーを人に勧めながらもコーヒーの生産と流通に携わる人々の搾取を呟く、等。そして劇作家の思索は「物語とは何か」を巡る。物語とは別個の事実が「だから」で強く結ばれた叙述を言い、人はそれを欲している。・・「物語」論の谷氏流表現だが、(コロナに限らず)「荒れ野」には思索の言葉が相応しく感じられる。

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    2020/07/26 23:02

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