まほろばの景 2020【三重公演中止】 公演情報 烏丸ストロークロック「まほろばの景 2020【三重公演中止】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    衣装の対比がとても良かったです。

    ネタバレBOX

    他の登場人物はシーンに合わせて厚着になったり裸に近い格好になったりするのですが、主人公の福村だけはずっとアウトドアウェアを着ています。他人の家の中でも、飲み屋でも。それは終幕まで決定的な解決もなくだらだらと続く福村の苦悩を象徴するだけでなく、上演全体を通して被災のイメージをより強く意識させるものになっていたように思います。
    この作品を見て思ったのは、そうか、いまやアウトドアウェアは災害をイメージさせる服になっているんだな、ということです。私にとってアウトドアウェアは、台風や豪雨などで被災した地域で働く作業員や災害ボランティアを想起させるからです。私はこの作品が、東日本大震災というよりも、近年の災害全般を想起させるものになっているように感じました。調べてみると、アウトドアウェアが日常着として定着したきっかけには東日本大震災の影響がある、という話も見つかり、私がアウトドアウェアから災害を想起したのはあながち自然なことなのかもしれないと思いました。その意味で、福村が最後までアウトドアウェアを脱げなかったことからは、個的な被災の果てしなさ、またその社会的被災とのギャップを考えました。

    青白い照明で引き締められた空間に、天井から吊るされた白の薄布が何枚もゆらめく舞台は、とてもきれいなのですが、きれいすぎるようにも思いました。今回の舞台から生まれる崇高さは、山や信仰にまつわる崇高さの持つ土臭さや時間の堆積をどこか漂白してしまっているように感じました。
    チェロの演奏とその演奏者が舞台上に存在する理由もよくわかりませんでした。演奏自体は祝詞や朗唱とのコントラストが面白く、また、良い音だなあ、と何度も思いました。
    出演している俳優のみなさんの、神楽のシーンの演技態も印象に残っています。おそらく時間をかけて稽古を積み重ねてきたであろう神楽を舞う身振りは、他のシーンの演技とは異なり「嘘をついていない俳優の身体」が表出しているように思いました。つまり、演技として舞っている、というよりも、「単に舞っている」ように見えたのです。演技というより、鍛錬の成果を見せているように。それが良いのか悪いのかは、私にはまだよくわかりません。

    <参考>
    アウトドアがファッションになる「きっかけ」が生まれた時。:https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/7789/
    White Mountaineering:http://www.whitemountaineering.com/about/
    (「服を着るフィールドは全てアウトドア」というブランドコンセプトについても考えさせられました)

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    2020/05/02 04:45

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