まほろばの景 2020【三重公演中止】 公演情報 烏丸ストロークロック「まほろばの景 2020【三重公演中止】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    なぜ山に登るのか。山とは何なのか。
    東日本大震災を物語に横たわるひとつの土台として、さまざまな人々の生きづらさが交差する。

    ネタバレBOX

    ひとりの男は、山に登りながら、過去へと下っていくのだが、もしかしたら過去を振り返るのは「登る」という作業なのかもしれない……と思うほど、上も下も、右も左も、奥も手前も、時間もわからなくなっていく。観客の感覚を曖昧にまぜこぜにさせ、現実か幻想かわからない世界に誘うのは、杉山至氏の美術や、声や生演奏や風をもちいた演出、顔の見えづらい照明などによる。ひとつひとつ時間を刻んでいるのだという印象を受ける。

    主人公を演じる小濱昭博さんを中心に、ひとつひとつ丁寧に積み上げてきたエピソードが、水のなかで舞う小菅紘史さんにより重さをともないながらも解き放たれるシーンは圧巻。

    そのシーンをひとつの頂点として、六根清浄の浄化と生々しさが、“身体”という舞台表現によってそこに存在する。作品として精錬されていることと劇場空間に黒い余白があるために、その広大さを実感として見いだすか、夢うつつのような浮遊感を感じるかは、人によるかもしれないが……

    2018年から上演されてきた作品ではあるけれども、何度も再演されることこそが、まるで登山のよう。この先もし形を変えようと「まほろばの景」が続くことが、わたしたちの誰もが背負った、まほろばへの旅なのかもしれない。

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    2020/04/30 17:37

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