満足度★★★★
鑑賞日2020/03/27 (金) 19:00
座席H列5番
まずは、もったいない。ザ・スズナリの舞台間口が狭すぎる。やはり、東京芸術劇場シアターウエストの幅はどうしても欲しい。せっかくのレビューパートが、狭苦しくてかなわない。
全員が、舞台前面に並ぶと、袖にはみ出してしまい、せっかくのゴージャス感がどうしても色あせてしまう。
登場人物の独唱部分、特に障子にもたれての田上唯などは、むしろ舞台の狭さが、観客との距離を縮めて、その雪之丞への哀切がとてもよく伝わってくるという点で、とてもよいのだけれど。
傾向は違うものの、同じアングラの系譜を継ぐ女性舞台「月蝕」や「廻天百目」が、最近どうも貧相で粗雑な感じがするのに、こちらは芸達者、歌上手、ダンス自慢が揃い、見得・セリフの切れと緻密な感情描写が、まさに「女歌舞伎」を掲げるだけの艶やか舞台。そして、アングラ王道の弾けっぷり。
主演の寺田結美は、女性が女形を演じるという転倒に、なんの衒いも感じさせない圧倒の押出し振り。歌舞伎役者として屋号がないのがもったいないほどの、漂う色気と溢れる義侠心。そして、物語に貫かれている仇討の執念は、進行とともに雪之丞の身体に眩いばかりと燃え盛る。
対峙する小谷佳加演ずる奉行の怪物ぶり、枠を固めるもりちえ、佐野美幸の悪党ぶり、雪之丞の子供時代を演じ舞う河辺珠怜の可憐さ、もはや言うことなし。
舞台装置の細密、衣装の絢爛、照明の粋、役者一人ひとりの仕草のなんと折り目正しいこと。そして、観客に痺れを催させる太腿の跋扈がたまらない。
2時間超を感じさせない極上のエンターティメントでした。だから、舞台の狭さが、、、、、もったいない。